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この秋、京都は蒔絵です。蒔絵が世界史をめぐります。
特別展示館の中央室が洋館のきらめきを取りもどし、世界各国の王侯のコレクションが一堂に会します。太陽王ルイ14世をそだてた大政治家のマザラン枢機卿やルイ15世の寵妃であったポンパドゥール侯爵夫人ゆかりの品々をはじめ、豪華このうえない蒔絵の調度が会場を埋めつくします。
蒔絵は、日本で独自に発展した漆の装飾技法です。16世紀までは一部の特権階級の調度を飾るものでした。その後、新興の武士たちによって日用品や建築物にも用いられるようになり、またちょうどその頃、日本にはじめてやって来た西洋人を魅了します。彼らはキリスト教の祭礼具や、それまで日本になかった西洋式の家具を蒔絵するよう注文し、本国へ持ち帰ったり、他国へ輸出したりしました。
17世紀初頭、禁教令によってスペイン・ポルトガル人が国外追放となり、海外に住む日本人も帰国を禁じられ、オランダと中国以外の船は公式には日本へ寄港できなくなります。「鎖国」は幕末まで続きますが、そのあいだも蒔絵は世界の王侯貴族に愛されました。しかし、この事実はまだあまり知られていません。
日本の蒔絵で自室を飾った人々には、フランス・ブルボン朝のルイ14世、15世、16世と妃のマリー・アントワネット、オーストリー・ハプスブルク家のマリア・テレジア、ドイツ・ザクセン公国のアウグスト強王、さらに中国清朝の康熙帝、雍正帝、乾隆帝など世界史上の錚々たる顔ぶれが並びます。
なぜ、蒔絵は彼らを魅了したのでしょうか。輸出漆器はどのように誕生し、どのような変遷をたどり、どのように愛好され、現在に伝えられたのでしょう。本展は最新の研究成果を踏まえ、海外の所蔵者の協力も得て、世界初公開、本邦初公開となる数多くの品をふくむ輸出漆器の優品に、日本国内に伝わる国宝や重要文化財を加え、日本が世界に誇る芸術――蒔絵の知られざる歴史を紹介する初めての大規模展覧会となります。
展示は七章で構成されます。
第一章「中世までの蒔絵」
第二章「西洋人が出会った蒔絵―高台寺蒔絵―」
第三章「大航海時代が生み出した蒔絵―南蛮漆器―」
第四章「絶対王政の宮殿を飾った蒔絵―紅毛漆器―」
第五章「蒔絵の流行と東洋趣味」
第六章「王侯のコレクションと京の店先」
第七章「そして万国博覧会」
京都で生まれ、異人に連れられて海を渡った日本の蒔絵。遠い異国の地でもその美しさ、愛らしさ、華やかさで人々の心をとらえ、今にいたるまで大切に守り伝えられてきました。その蒔絵たちが数百年の時を経て、この秋、京都へ里帰りします。
この機会にぜひ京都国立博物館で、その晴れ姿を見てあげてください。 |
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