[特別展覧会]宸翰 天皇の書
展示作品紹介
 天皇の書は「宸翰(しんかん)」とよばれ、プライベートなものから、国家の安泰を願うものまで、内容・種類ともじつにバラエティー豊かです。これは一面では、天皇が政治や宗教、あるいは文化などのあらゆる方面において、時代を牽引する存在であったことをしめしています。
 したがって、こうした自覚のもとに修めた学問は、それを体現する場において、帝王としての尋常ならざる気品、風格、あるいは内容を備えているため、宸翰は歴史的にも美術的にも多くの人を惹きつけてやみません。まさに、宸翰は「書の王者」であるといっても過言ではないのです。
 本展覧会では、奈良時代から昭和時代までの紛うことなき宸翰、および関連作品144件(国宝17件、重要文化財66件、重要美術品11件をふくむ)を厳選し、一堂に展示いたします。

正倉院宝物のご出陳について

11/13日(火)から25日(日)の間、正倉院宝物のご出陳が2件ございます。

聖武天皇宸翰雑集 奈良時代 天平3年(731)

「聖武天皇宸翰雑集」は、聖武天皇が中国・六朝から唐時代の代表的な詩文145首を書写したもので、現存する歴代天皇の書ではもっとも古く、わが国における宸翰の歴史はここからはじまったといえます。 天皇の崩御後、光明皇后が遺愛の品々を東大寺に献納したさいの目録「国家珍宝帳」(正倉院宝物)には、この雑集についての記載がみられます。
 一点一画までおろそかにしない整然とした書風は、王羲之(おうぎし)(321~79)あるいは褚遂良(ちょすいりょう)(596~658)の影響が顕著といわれています。しかし、こうした技法面のみならず、どこまでも持続する緊張感に、「天子とはかくあるべし」という精神面での大いなる自覚を感じずにはいられないでしょう。

沙金桂心請文 孝謙天皇および淳仁天皇宸翰御画あり 奈良時代 天平勝宝9年(757)・天平宝字3年(759)

「沙金桂心請文(しゃきんけいしんしょうもん) 孝謙(こうけん)天皇および淳仁(じゅんにん)天皇宸翰御画(ぎょかく)あり」は、「請沙金注文(しょうしゃきんちゅうもん)」および「施薬院請薬注文(せやくいんしょうやくちゅうもん)」からなる一巻で、どちらも現存する天皇唯一の遺墨となります。

確認されている奈良時代の宸翰は、上記2件と現在展示中の『国宝 聖武天皇宸翰御画勅書(静岡・平田寺蔵)』の3件のみとされており、今回はその全てが展示されるというまさに奇跡的な機会となっております。

展示構成

宸翰の世界
展覧会の導入として、各時代において紡ぎ出された宸翰を紹介し、内容・種類そして「かたち」の豊富さをご覧いただきます。
画像
重要文化財 花園天皇宸翰消息 鎌倉時代 元弘元年(1331)
京都国立博物館蔵
画像
重要文化財 金剛般若経 後奈良天皇宸翰 室町時代 天文16年(1547)
京都・正受院蔵
三筆と三跡
天皇の書風に多大な影響を与えた三筆と三跡、なかでも空海・藤原佐理・藤原行成の書を中心に展示します。
画像
国宝 書巻(本能寺切) 藤原行成筆 平安時代 11世紀
京都・本能寺蔵
唐風と和様
─宸翰様への道─
わが国における宸翰のはじまりである聖武天皇から後嵯峨天皇の書をたどり、次世代にどのようにつながるのか考えます。
画像
国宝 嵯峨天皇宸翰光定戒牒 平安時代 弘仁14年(823)
滋賀・延暦寺蔵
画像
国宝 高倉天皇宸翰消息 平安時代 治承2年(1178)
京都・仁和寺蔵
画像
国宝 後鳥羽天皇宸翰御手印置文 鎌倉時代 暦仁2年(1239)
大阪・水無瀬神宮蔵
きらめく個性
─宸翰様の展開Ⅰ─
皇統が持明院統と大覚寺統という二つの系統にわかれ、それぞれが独自な書風をみせた後深草天皇から花園天皇の書を追いかけます。
画像
重要文化財 後深草天皇宸翰消息 鎌倉時代 正応3年(1290)
京都国立博物館蔵
画像
国宝 亀山天皇宸翰願文 鎌倉時代 永仁7年(1299)
京都・南禅寺蔵
画像
重要文化財 後二条天皇宸翰消息 鎌倉時代 14世紀
京都国立博物館(守屋コレクション)
書聖・伏見天皇
能書ぞろいの天皇のなかでも藤原行成にも勝ると絶賛され、いまでも人気のたかい伏見天皇の書を心ゆくまでご堪能ください。
画像
重要文化財 後撰和歌集巻第二十 伏見天皇宸翰 鎌倉時代 永仁2年(1294)
大阪・誉田八幡宮蔵(展示期間:11月6~25日)
画像
重要文化財 伏見天皇宸翰願文 鎌倉時代 正和2年(1313)
京都国立博物館蔵(守屋コレクション)
個性の継承
─宸翰様の展開Ⅱ─
前代からの独自性を受けつぎながら、次第に安定をみせた後醍醐天皇から正親町(おおぎまち)天皇の書をご覧いただきます。
画像
国宝 後醍醐天皇宸翰天長印信 南北朝時代 延元4年(1339)
京都・醍醐寺蔵
画像
重要文化財 後小松天皇宸翰消息 室町時代 応永27年(1420)
京都・妙法院蔵
模索と胎動
─第二の宸翰様へ─
従前のカラをうち破り、来るべき時代への橋渡しとなった後陽成天皇から後西天皇の書を展示します。
画像
重要文化財 後陽成天皇宸翰消息 桃山時代 文禄元年(1592)
京都国立博物館蔵(守屋コレクション)
画像
後水尾天皇宸翰覚書 江戸時代 承応3年(1654)
京都国立博物館蔵
新時代の幕開け
─第二の宸翰様─
新たな書風を確立し、それぞれの個性が再び顕著にあらわれる霊元天皇から昭和天皇の書をたどります。
画像
重要文化財 後桜町天皇宸翰短籍 江戸時代 明和4年(1767)
兵庫・柿本神社蔵
画像
一行書「仁智明達」 大正天皇宸翰 明治時代 19~20世紀
兵庫・大阪青山歴史文学博物館蔵