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2017年10月19日

開館120周年記念 特別展覧会「国宝」を見に行くリン♪~Ⅱ期~

こんにちリン!

トラりんだリン!



トラりん:開館120周年記念 特別展覧会「国宝」のⅡ期がスタートしたから、これから展示室を見に行くよ♪

今回は3回も展示替があるから、全部の作品を見たいボクはわくわくしっぱなしだリン!!

だって、どれも見逃せないし☆


大原研究員・伊藤研究員・羽田研究員・上杉研究員:トラりん、どうぞよろしくね!


トラりん:そう!

この「国宝」展のⅠ期からⅣ期を紹介するブログで、京博の全12ジャンルを担当する研究員が、この虎ブログに登場するリン!

とっても豪華だよ☆

今日はこの4人+1虎で「国宝」を見に行くリン♪

それじゃあ、みんな・・・


大原研究員・伊藤研究員・羽田研究員・上杉研究員:

       \しゅっぱーつ☆/


大原研究員:トラりん、「国宝 普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう) 東京国立博物館」<展示期間:~2017年10月29日(日)>から見てみよう。

これは、普賢菩薩といって『法華経(ほけきょう)』を守護する仏様で、白い象に乗るのが特徴。

『法華経』は最澄が日本に広めた天台宗で重んじられたので、平安時代以降、普賢菩薩はたいへん信仰を集めたんだ。



トラりん:うーん・・・

きれいなんけど、細かくてよく見えないリン・・・


大原研究員:そうだね。

長い年月が経って、いろいろ見えにくくなっていることもあるけど、体の線なんか極細で見えるか見えないかのギリギリだよね。

でも、裏を返せば、それだけ繊細な表現をきわめているということ。

これは、ありがたい仏様を美しく飾ること自体に目的があるので、細部をゆるがせにしなかったというわけ。


トラりん:それでも、隣に並んでいる同じ時代の作品に比べると、これは特に落ち着いて繊細な感じだリン。

時代が同じで似ているところもたくさんあるけど、違いの方が気になっちゃう!



大原研究員:なかなかいい所を突いてくるね。

平安時代後期の貴族の美意識がこういう表現を産んでいるのは他と比較してわかるけど、でもなんか違うよね。

これはね、当時の最新の中国の様式に影響を受けたからと考えられているんだよ。

平清盛が積極的にすすめた「日宋貿易」によって、最新の中国の文化への憧れが高まったんだね。

落ち着いて見えるとトラりんは言ったね。

虹の七色を知っているかな?


トラりん:それならボクにもわかるよ!!

赤・橙・黄・緑・青・・・藍・・・・・・えっと・・・・・・・・・紫!

ふぅ☆ギリギリセーフだリン!


大原研究員:その通り。

光は波長によって色の見え方が変わる。

波長の短い緑とか青は、目への刺激が弱く、寒色と言われるんだよ。

この絵では、他の同時代の絵に比べて寒色が結構な面積に使用されているよね。

更にさっきの繊細な線、こういうものはこの時期の中国の絵画にも見られる特色なんだ。


トラりん:そう言われて見ると、目に優しい☆

けっこう理屈で絵の違いが説明できるものなんだね!


大原研究員:まあ、たまたまだけどね。

ともかく、そういう中国への憧れと日本の独特の美意識を融合させて、他とちょっと違うしっとりした雰囲気を作り出しているわけだ。

そういうことをしようとして成功した作者の腕と感覚の冴えはすごいと思うし、それを日本人がやったわけだから、日本の国宝になったのも納得できるんじゃないかな。


トラりん:なんだか、わかった気になってきたリン!!


大原研究員:一抹の不安はあるけど、わかってくれたならうれしいね。

この絵は戦前から高い評価を受けていて、戦後の文化財保護法にもとづく国宝の指定では真っ先に選ばれ、絵画の指定第一号となったんだよ。


トラりん:なんと!

それを聞いたら、もっとじっくり見たくなってきたリン!


大原研究員:国宝というのは、他の作品と比べてじっくり見るとよさがよくわかるよね。

やはり、たくさんの文化財の中から選んで優先的に保護を図ろうと決めたものだからね。

ちょっと他と違うことをしている作品が多いんだ。

今回の展覧会にはたくさんの国宝があるから、そろそろ伊藤さんにバトンタッチしよう。




伊藤研究員:次は「国宝 中尊寺金色堂堂内具(ちゅうそんじこんじきないぐ)のうち金銅華鬘(こんどうけまん) 岩手・中尊寺金色院」<展示期間:~2017年10月29日(日)>だよ。



トラりん:うわー!きれいだリン!

でも、これ何に使うの?


伊藤研究員:これは仏具の1つで、お寺のお堂にかける飾りだよ。

全体は銅でできていて、金メッキをしているんだ。


トラりん:あ、お花や果物を供えるのと似ているね☆


伊藤研究員:そう、「華鬘」とは、「花のかずら」。

元々は本物の花を糸でつなげて、かけていたと考えられているんだ。

華鬘にはこのようにリボンのような紐が形どられているけど、これが生花を束ねていたものの名残りかもね。

それと背景の花は、「宝相華(ほうそうげ)」と言って、仏教美術で最も多く用いられる架空の花のモチーフ。左右にいるのは、顔は仏、体は鳥の伝説の生きもの「迦陵頻伽(かりょうびんが)」だよ。



トラりん:本当だ!

仏様の世界の生きものなんだね☆

見たことがないお花と、「迦陵頻伽(かりょうびんが)」さん・・・見つめていると不思議な気持ちになるリン!

お寺のお堂に飾るということは、なにか想いがあってだよね!

うーん、でもそれがわからないリン・・・


伊藤研究員:いい線いってる!

仏様の世界というのは、大きくて、美しくて、豪華絢爛(ごうかけんらん)なものとされているんだ。

だから仏様のいる空間を美しく飾って、現世でもその世界を再現しようとしているんだね。

仏具には叩いて音を出したり、お香を焚いたり、花を生けたりといろいろなものがあるけど、全てにそういう「飾り」への想いがあるんだ。

その中でも華鬘は、平安時代以降に多く作られるようになったんだ。


トラりん:それだけむかしの人たちにとって、仏様の存在が大きかったということだね。


伊藤研究員:そうだね。

特にこの華鬘が作られた平安時代は、貴族・武士を中心に浄土教が浸透して、阿弥陀如来にすがり、極楽浄土に往生したいという信仰が強かったんだ。

平安時代に栄えた奥州藤原氏(おうしゅうふじわらし)は、中尊寺を建立し、阿弥陀如来の煌(きら)びやかな極楽浄土をあらゆる技術を駆使して再現したんだよ。


トラりん:あ!この華鬘のキャプションにも「中尊寺」って書いてあるよ!



伊藤研究員:これは中尊寺の金色堂に飾られていたものの1つ。

その後、奥州藤原氏は源頼朝によって滅びるんだけど、金色堂に残った装飾は、やはり豪華さを失わない。

「五月雨(さみだれ)の 降り残してや 光堂」。

みちのくを訪れた松尾芭蕉が、金色堂を詠んだことで有名な句だよ。

この、「栄華」と「はかなさ」という対照するものを感じてもらえるんじゃないかな。


トラりん:切なさの中にある美しさだリン・・・




上杉研究員:次は空海と最澄の「書」を見てみよう。


トラりん:最澄さんと空海さん!

ボク、名前聞いたことあるよ!


上杉研究員:2人とも平安時代のすごく有名なお坊さんで、最澄は天台宗を、空海は真言宗を開いた人だよ。

また、実際に中国に渡り、書や最新の学問を学んだ人でもあるんだ。

「弘法(こうぼう)にも筆の誤り」ということわざがあるけど、弘法とは空海のこと。

本当に有名な2人だね。


トラりん:ふむふむ・・・2つの作品を見た感想はね・・・

ボクは最澄さんは優しい、空海さんは力強い雰囲気を感じるリン!

でもどちらも、とっても美しいね☆

それで、この2つの書はどういうものなの?




上杉研究員:トラりん、書を楽しんでくれているね。

最澄筆の「国宝 尺牘(せきとく)(久隔帖(きゅうかくじょう)) 奈良国立博物館」<展示期間:~2017年10月29日(日)>は、最澄が空海の所にいる弟子に宛てた手紙なんだ。

最澄は空海から詩をもらったから返事を書きたかったんだけど、その中にわからない言葉があったんだ。

それを空海に訊いてほしいとお願いした内容だよ。

これは最澄の細かな心遣いが素晴らしいんだ!



トラりん:どういうこと??

もー!さっきから自分だけ楽しんでいないで、ボクにも教えてよー!


上杉研究員:ごめん、ごめん。

「大阿闍梨(だいあじゃり)」と書いてあるのが見えるかな?

これはお坊さんの位のことで、空海のことを指しているよ。


トラりん:阿闍梨?

じゅるリン・・・☆


上杉研究員:さすが食いしん坊!

いま絶対、京都の有名なお菓子「阿闍梨餅(あじゃりもち)」を想像したよね!


トラりん:そ、そんなことないリン!

真面目に聞いているところだリン!!

続けてほしいリン!!!


上杉研究員:この「阿闍梨」の前は、改行されていたり、一文字分空白になっているね。

これは、空海を指す言葉の上に文字を乗せることは失礼にあたるという最澄の配慮なんだ。


トラりん:直接空海さんに書いたお手紙ではないのに、空海さんを思う気持ちが伝わるお手紙だね。


上杉研究員:言葉の選び方からも、最澄のまじめな性格がうかがえるよ。

ちなみに、最澄自筆の手紙で残っているのはこれだけ。

僕たちが見られる、唯一の最澄自筆の手紙だよ。


トラりん:それは、とっても貴重だリン!!


上杉研究員:いまでは、メールや電話、伝える方法はいろいろあるけど、当時は手段が限られているからこそ、その中で伝わる印象は大変大事だね。

だから、書くことへの意識がとても高かったんだ。


トラりん:読む人の顔を想像しながら書いたのかなぁ?

空海さんの作品は?



上杉研究員:空海筆の「国宝 聾瞽指帰(ろうこしいき) 上巻 和歌山・金剛峯寺」<展示期間:~2017年10月29日(日)>は、どれだけ仏教がすぐれているかを力説する本だよ。

とにかく、空海の文才と力強い筆蹟に感動しちゃうんだ!


トラりん:ボクには全然読めないリン!


上杉研究員:大丈夫。読めなくても楽しめるのが書だよ。

中国へ行く前の青年空海の仏教にかける想いが伝わってくるかな。



トラりん: どれどれ・・・むむむ!

ねー!「虎」の字を見つけたリーン♪

凛々しくて、強そうで・・・とにかく美しい虎を想像しちゃうね☆

たった一文字でも、とっても大きな力を感じるリン!



上杉研究員:うん、どちらの作品にも気持ちがこもっているよね。

だからこそパワーがあるんだ。

日本の文化そのものに影響を与えた空海と最澄の作品を一緒に見られるこの機会。

2人の作品から、書の力・雰囲気を感じてもらえたらうれしいな。



トラりん:で・・・

羽田研究員、以前の書跡の回とリンクさせるのやめてくれない?



↑こんなことしているけど、羽田研究員もすごく丁寧に作品のことを教えてくれたリン!



トラりん:今回も研究員のみんなが集まってくれたおかげで、「国宝」展ならではの特別な時間になったね!

ふだん博物館に来る機会のないおともだちも、こうして作品にあるストーリーを聞くと「面白い!」とか「もっと知りたい」って思わない?

じつは、ボクがそうなんだ☆

京博に生まれて、2年。

展示のことはこうして研究員のみんなに教えてもらわないとわからないけど、お話を聞くと見方が変わって、とっても興味深くなるんだ!

ボク自身、まだまだ勉強中だけど、これからもみんなと一緒に展示を楽しんでいけたらうれしいリン♪


トラりん・大原研究員・伊藤研究員・羽田研究員・上杉研究員:今回登場した作品は、すべて10/29(日)までの展示だから、「国宝」展Ⅱ期も

       \楽しんでねー☆/


開館120周年記念 特別展覧会「国宝」


会期:2017(平成29)年10月3日(火)~ 11月26日(日)

 4期に分けて一挙公開!

 Ⅰ期 10月3日(火)~10月15日(日)

 Ⅱ期 10月17日(火)~10月29日(日)

 Ⅲ期 10月31日(火)~11月12日(日)

 Ⅳ期 11月14日(火)~11月26日(日)

※Ⅰ~Ⅳ期は主な展示替です。一部の作品は、上記以外に展示替を行います。


会場:京都国立博物館 平成知新館


交通:JR、近鉄、京阪電車、阪急電車、市バス 交通アクセス


休館日:月曜日


開館時間:午前9時30分から午後6時まで(入館は午後5時30分まで)

※ただし会期中の毎週金・土曜日は午後8時まで(入館は午後7時30分まで)


観覧料:一般 1,500円(1,300円) 大学生 1,200円(1,000円) 高校生 900円(700円)

*( )内は団体20名以上。

※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料となります(要証明)。

※大学生・高校生の方は学生証をご提示ください。

※キャンパスメンバーズは、学生証をご提示いただくと団体料金になります。

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