こんにちリン!
トラりんだリン!
宋元仏画展、開幕したリン!
きょうは森橋研究員と展示室を見に行く予定なんだけど、どこにいるのかな?
(ちょっと早いけど)トラりん、ハッピーバースデー!
(トラりん)
わ!ありがとリン!
(森橋研究員)
ことしで10周年のトラりん、10回目の10月10日のお誕生日を宋元仏画展の期間中に迎えられたのはきっと天のはからいだね!ルーツをたどる旅「トラりんと宋元仏画」も楽しんでいるかな?
うん!漫画の中で宋元時代にタイムスリップしているリン!
(上杉研究員)
えっ、異世界転移トラりん!?
(福士研究員)
光琳の「竹虎図」から飛び出して大冒険だね!
今回の特別展「宋元仏画─蒼海(うみ)を越えたほとけたち」は、日本の絵画に取り入れられた表現のルーツとなる、中国の宋元時代の絵画を展示しているよ!たくさんのおともだちに見てもらえるよう、今回もがんばろうね!
うん!PR大使としてボクも初心に帰ってがんばるリン!それじゃあみんなで...
いざ!展示室へ🎉
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最初に紹介するのはこちら!国宝「孔雀明王像(くじゃくみょうおうぞう)」だよ。
孔雀明王さまだリーン!実物にお会いできて感激だリン!
今回の展覧会のメインビジュアルでもあるこの作品は、宋(北宋)時代の最高傑作と謳われる名作。色彩豊かで精緻な表現に注目だよ。
色がとってもキレイだリーン!クジャクりんも生き生きしているリン!
迫真的な表現で描かれた孔雀、足元の彩雲がぶわっと払われるように広がるようすなど、孔雀明王がまさに今降り立ったかのような臨場感が感じられる絵だよね。
孔雀明王さまはどんなほとけさまなの?
孔雀は毒蛇や毒虫を食べる鳥と信じられてきたことから、孔雀明王は邪気を払うとされ人々を災いから守り、日照りの時に雨を降らせる御利益があるとされるよ。明王は怒った顔(憤怒相)で描かれることが多いけど、孔雀明王の正面のお顔はおだやかでやさしい顔(慈悲相)なのも特徴だね。
孔雀明王さまはクジャクりんと一心同体なんだね♪
そうだね。生きているような孔雀とともに現れた明王の姿。現実に対面しているかのようで、身の引き締まるおごそかな気持ちになるね。
うん、とってもしずかな気持ちになるリン✨
それでは次の作品だよ。こちらは重要文化財「蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)」。
ん?なんだか見覚えがあるリン!
ねぇ!?
トラりん、2023年の特集展示「新収品展」で紹介した原在中(はらざいちゅう)筆「蝦蟇鉄拐図」を思い出したかな?
トラTube:
【トラりんと作品紹介】「蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)」ってなぁに?
https://youtu.be/R5X2oFhzxDE
あ!そういえばトラTubeで紹介したリン!
こちらの顔輝筆が、元祖「蝦蟇鉄拐図」だよ。
「るーつ」だリーン!2人の仙人さんの絵だよね!
右が鉄拐(てっかい)仙人、左が蝦蟇(がま)仙人だね。水墨を基調とした背景の空間表現と仙人たちの一体感が本当にすばらしいよ。力のある的確な墨の線も見事だよね。
髪の毛や色のついたところはとってもこまかいのに、服の線はとっても力強いリン!どんな人が描いたのかな?
作者の顔輝(がんき)はね、私いち推しの...、おっと、長くなりそうだから手短にね。南宋の終わりから元にかけて活躍した画家で、この「蝦蟇鉄拐図」が現在知られている唯一の真筆と考えられているよ。
こんなにいろんな線を描き分けられるなんて、すごい画家だリン!描かれている2人の仙人はどんな人だったっけ?
鉄拐仙人は自分の魂を身体から遊離させる仙術を使えるんだけど、今まさに口から噴き出して飛び立っているね。一方の蝦蟇仙人が背負っている白い蝦蟇(ヒキガエル)の口元をよく見てみて。なにか吹き出しているような筋が見えるかな?もともとは鉄拐仙人の姿と呼応するように、霊気を吐きだしていたみたいなんだけど、上部の絹が傷んで取り換えられているので、いまは少ししか見えないんだ。
2人とも、お口からモワ~ッと出ているの?2人の仙人の絵が対になっているんだね!
それでは、この作品を元に作られた日本の江戸時代の作品については、福士研究員に紹介してもらおうかな。
こちらが日本の江戸時代に描かれた、原在中の「蝦蟇鉄拐図」だよ!
あれれ?さっきの顔輝さんの絵とそっくりすぎて、見分けがつかないリン!
それもそのはず、たぶん原在中は顔輝の原本をトレースする機会があったんだと思うよ。だから、そっくり同じ形の絵を描くことができたみたいなんだ。
「とれーす」ってなぞって描いたってこと?よっぽどこの作品のことを学びたかったんだね!
在中は、あの円山応挙などに学んだ画家なんだけど、古い時代の中国の絵もたくさん勉強しているんだ。在中だけじゃなく、江戸時代の画家たちにとって、宋や元の絵画は学ぶべきお手本だったんだよ。特に、牧谿(もっけい)や顔輝の絵は多くの画家たちに影響を与えているよ。
中国絵画が日本の画家たちのお手本になったことがとってもよく分かる作品だリン♪
それでは最後に、上杉研究員に...あれ。どこにいるのかな。
あ、いたリン。
ちょっと、どうしたの?
トラりんがなかなか来てくれないからうっかり魂を飛ばしていたよ。今回の宋元仏画展、展示作品には絵画が多いけど、実はお経も出ているんだよ!
お経かぁ、難しそうだリン...
難しくないよ!今回展示されているお経は、お経の一場面を描いた「経絵(きょうえ)」がついている作品なんだ。
「さしえ」ってこと?
そのようなもの。手で写した写経や、板木で摺られた版経にも、経絵はみられるよ。さっそく見てみよう!こちらは「紺紙金銀字華厳経(こんしきんぎんじけごんきょう) 巻第七十一」だよ。
ほんとだ!絵がついているリン!しかもキラキラ✨
金銀泥の細い線で画面いっぱいに書きこまれているでしょ。これは『華厳経』入法界品に説かれる、善財童子(ぜんざいどうじ)という少年が悟りを求めて53人の先生を訪ねていく、というお話の一場面が描かれているんだよ。
善財童子の大冒険だリン!いつ描かれたものなの?
中国の元時代の至元28年(1291)頃だよ。お経の最後には発願文といって、「このお経を書写した功徳(くどく)でお願いを叶えてください」という文章が書かれているんだ。
お経をうつしたからお願い事をかなえてくださいってこと?面白いリン!
そう、その文章を見ると終南山(しゅうなんざん・陝西省西安市)万寿禅寺(まんじゅぜんじ)の恵月(けいげつ)というお坊さんが作らせたものだということが分かるんだ。
ぷろふぃーるだリン!上杉研究員みたいに作品のことを調べるお仕事の人にとっては、貴重な情報なんじゃない?
さすが博物館の子、よくわかっているね。元の時代のことなのに、いつ・どこの・誰が作らせたかが分かるのは、研究員にとって大変嬉しいことなんだよ。
ふっふーん!ボク「博物館の子」だから研究員が喜ぶことは分かるリン♪
このお経のすごいところは、絵を描いた人まで分かることなんだ。巻替で後期に展示する「普賢行願品(ふげんぎょうがんぼん)」(巻第八十一)には、浙江省杭州市の沈鏡湖(ちんきょうこ)とその息子、応祥(おうしょう)の2人で全81巻の絵を描いたと絵の隅っこに書いてあるんだよ。ぜひ、後期展示も見てみてね!
絵を描いた人のぷろふぃーるまで分かるんだね!親子2代で81巻の力作だリン!後期展示で見れるのも楽しみだリン!
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今回もおもしろかったリーン!
おかえり~、トラりん!
あれ?森橋研究員、肩に何を乗せているの?
特別展オリジナルグッズのネックピローが、蝦蟇仙人のパートナーの白い蝦蟇に変身するんだよ~。作品でははっきりとわからなかったかもしれないけど、実は仙界の生き物である白い蝦蟇は3本足!うさぎと同じで、月の精と言われているよ。それと、3本足の蝦蟇は体内で不老長寿の仙薬をつくるとされていたんだけど、時代とともにお金を生みだす縁起の良い生きものと信じられるようになったんだ。トラりんも仲良くしてあげてね!
ガマりん!おともだちになれそうだリーン!
じゃじゃーん、トラりん、図録もあるよ!ハッピーバースデー🎉
ねぇねぇ聞いてよ、上杉研究員はいつもボクに重い本をくれるリン!
まぁまぁ、トラりん。今回の図録も細部までこだわった逸品だから、じっくり手に取ってながめてみてね。
わぁ、とってもずっしりしているリン!
そりゃそうさ!この特別展は宋・元・高麗の仏画の優品と関連作品170件が一堂に会するまたとない機会!その半数以上が国指定文化財(国宝13件、重要文化財75件)!前期展示の大部分が後期には展示替・場面替になるので、ぜひ、前期・後期どちらも足を運んで、宋元仏画のすさまじさを堪能してもらえるとうれしいな。
大規模な展示替があるってことは、作品数もたくさんあるってこと?だからこのずっしり感...!
図録の重さだけの話じゃなくて(笑)、宋元仏画は、本当に一つ一つの作品が重量級というか、存在感があるけど、そういう作品がたくさん日本に伝わっていて、そのことが日本の絵画史にも大きな影響を与えているところにも注目してほしいな。そうすることで、日本の絵画をまた別の視点から見ることができると思うよ。
日本の絵画の「るーつ」なんだね!ボクも宋元仏画を見た後には、日本絵画の見方が変わるかな?
「宋元仏画」って聞くと、あまりなじみがないからわからない、難しいと思われるかもしれないけど、日本でも良く知られているほとけさまの絵ばかりだから、じつは親しみやすいと思うよ。制作された当時の人々や、日本に渡ってきた後に代々伝えてきた先人たちが、どんな気持ちで向き合っていたのかを想像してみるのもいいかもしれないね。それに宋や元の時代の描写は本当に優れているから、純粋に絵画の世界観にひたることもできるし、ほとけさまをどのように表現しようとしていたのか、日本の仏画とはどういう共通性や違いがあるのかなど、いろんな見方で展覧会を楽しんでもらえるんじゃないかな。
日本の絵画と比べながら楽しめる、宋元時代の名品がギュッと詰まった展覧会なんだね!前期も後期も楽しみだリン!
京博で待っているリーン!
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■会期:
2025年9月20日(土)~11月16日(日)
■会場:
京都国立博物館 平成知新館
■休館日:
月曜日、10月14日(火)、11月4日(火)
※ただし、2025年10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)は開館
■開館時間:
9:00~17:30(入館は17:00まで)
金曜日は20:00まで開館(入館は19:30まで)
■記念講演会
・10月11日(土) 「戦国武将と宋元画」
講師:羽田 聡(京都国立博物館 企画室長兼美術室長)
・10月25日(土) 「奝然請来の仏典とその影響」
講師:上杉 智英(京都国立博物館 主任研究員)
・11月8日(土) 「宋元の道釈人物画―境界をうつろう聖者―」
講師:森橋 なつみ(京都国立博物館 研究員)
【時間】13:30~15:00
【参加方法】特別展「宋元仏画--蒼海(うみ)を越えたほとけたち」記念講演会よりお申込みください。
【申込期限】各講演会3日前(水) 12:00(定員に達した時点で受付終了)