こんにちリン!
トラりんだリン!
8月だリン!毎日あっついリン!こんな日は、すずしーい展示室で過ごしたいリン!
(大原研究員)
久しぶりやね、トラりん!
(トラりん)
大原研究員!
虎ブログ登場はおひさしぶリンだね!きょうはどんな展示を見に行くの?
今回の特集展示は「密教図像の美」がテーマだよ。
上田治さんというお医者さんが集めた図像なんだけど、バラバラになったものを集め直したりされていて、御遺族もそれが再びバラバラになるのは残念だし、東寺や高山寺に伝わっていたものが中心なので、京都にある当館にあった方がいいだろうということで、寄贈・譲渡くださったものなんだ。長らく公開の機会がなかった「幻のコレクション」を展示するんだよ。
幻のコレクション!楽しみだリーン!
展示室にれっつごー!
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それでは1つ目の作品を見てみよう。
あ!チラシに載っていたおててだリン!
この優美な手は千手観音の手を1つ1つ描いたものだよ。千手観音は手が千本あるからこその名前だけど、42本の大きな手がある。これを図で示したもので、図録の表紙もこの作品からだね。
千手観音の42本のおててが紹介されているんだね!最初にある絵は表紙みたいなもの?
この冒頭の部分は、「見返し」といって、ここでは墨で千手観音とそのお供を描いている。トラりん、上下にやたら空白があることは気にならない?
いわれてみれば...たしかに変な余白があるリン!
そうだね。これは、僕の推測になるんだけど、中国の版画のお経の見返し絵を縮小してこの幅におさめたから、上下がものすごく空いてしまったと思うんだ。
縮小したから不自然になっているんだ!この作品は、中国のお経がお手本だったの?
やっぱり、中国はインドに近いから、仏教のもう1つの本場と考えられていたんだ。だから、この絵は憧れの当時最新の中国の仏教文化を伝えたものということになるね。
そう言われると、なんだかどんどん中国っぽく見えてきたリン...
暗示にかかりやすいね。なんかだまされやすそうだから、ごはん係(京博スタッフ)の言うことはきちんと聞いた方がいいね。
ぷんすか!あんまりな言い草だリン!ひーふーみー...あれ?さっきおてては42本といったのに、41本しか絵がないリン!大原研究員、数え間違えてない?!
甘いね。手を合わせる合掌は2本をひとつの図に描いているから41枚でいいんだよ。
あ!そうか!合掌のおてては2つだから、1枚になるんだね!ん?よく見たら、この手の部分は、紙の色が違うリン!
絵はプロに描いてもらい、別の紙を貼り付けているんだよ。色が違うのは、おそらく荏胡麻(えごま)からできた荏油(えのあぶら)を引いているからだね。油を塗ると、紙が半透明に透けるんだよ。ただ、乾きやすい油でないといけない。これで正確なコピーをつくったんだね。
「少年少女博物館くらぶ」で教えてくれたこぴぃ技術だね!ボクも体験したリン!あぶらをぬるとほんとに紙が透けて、よく見えるようになったよ!
やっていたね。正確な写しができるようになるにはまだまだ修行が必要そうだけど。
ぐぅう...きびしいリン!「こぴぃ」がじょうずな昔の人はすごいリン!
図像って、貴重な海外からの情報を伝え広めるためのものでもあったから、コピーの技術が発達したんだ。
今だったら、とらふぉんでパシャリだリン!
本当に便利ないい時代になったよね。
ところで、このおててにはそれぞれどんな意味があるの?
千手観音さんは、いろいろな持ち物をもっているけれども、これは仏様の働きを示そうとしたものなんだ。トラりんのお気に入りの手はどれなんだい?
えーとね...これ!おいしそうなものを持っているリン!
ああこれは、蒲桃(ほとう)、つまりぶどうだよ。豊穣の象徴のような果物だから、豊作への願いは、この手に対する呪文を唱えなさいって、横に書いてあるね。
へーっ!!ボクもその呪文を覚えたいリン!
うんうん、勉強熱心なのは結構だけれど、42本そのリアクションだと日が暮れるから、次の作品に行こう。「金剛童子図像断簡(こんごうどうじずぞうだんかん)」だよ。
金剛童子って?
密教の護法(ごほう)の神様だね。黄色の体に2本の手の姿の像は、天台宗でも、滋賀の園城寺(おんじょうじ)、三井寺(みいでら)とも呼ばれるお寺を再興した智証大師・円珍(ちしょうだいし・えんちん)(814~891)のお弟子さんの流れ、寺門派(じもんは)で特に大切にされたものなんだ。
...ねえちょっと、お話が一気に難しくなったリン!ボクのきおくには「ごぼう」しか残っていないリン!
「ごぼう」じゃなくて「ごほう」ね。まぁ、それはしかたないね。そんなもんと思ってほしい。なんでこんなことを言ったかというと、この絵はもとは真言宗の東寺に伝わっていたものなんだ。だから、この絵が描かれた当時、平安時代の終わりになるけれども、宗派の枠を超えてお坊さんは勉強していたということを言いたかったからなんだ。
なるほど、お坊さんは勉強熱心だリン...ていうか大原研究員!もっとこう、1歳のボクの心にも、ぐっとくることを教えるリン!
あいかわらず高飛車だね。じゃあ、ちょっとクイズを出してあげよう。右上に書いている字「井井井 寺」は、なんと読むか、当ててごらん。
うーん、「井」が三つ、ってことは...
いいいでら!
これこれ、もうちょっと頭をひねってごらん。
う~~~~~~~~ん...あ!(ピコーン)
三つの井で「みいでら」!?
大正解。だから最初に言ったろ。園城寺で大切にされた仏様だって。伏線はここで回収されるんだよ。
すごいリン!ボク、またひとつ賢くなってしまったリン!おのれの才能が怖いリン...
まぁ、「いいいでら」からはずいぶん成長したね。
この勢いでどこまでも大原研究員についていくリン♪
暑苦しいから、たまにでいいよ(塩対応)
大原研究員、そるてぃ~だリン...☆
続いてはこちら。「真達羅大将図像(定智本十二神将図像)(しんだらたいしょうずぞう じょうちぼんじゅうにしんしょうずぞう)」だよ。
十二神将ってことは...全部で12人いるの?
そうだね。薬師如来を守る12人のガーディアンだね。
がーでぃあん(大原研究員の肩にもふっ)
暑苦しい!それはカーディガン!ガーディアンは守護神だよ。
ちょうど12人いるから、十二支に当てはめられるようになったんだ。この人も頭に鶏がついているでしょ。
干支の鶏りんなんだね!
これは、12世紀に活躍した定智(じょうち)という有名な絵描きさんが作り出した絵柄を、玄証(げんしょう)(1146~1222)という絵描きさんが勉強のためにコピーしたものなんだ。もとの絵は色が付いていたようで、色指定の文字が所々にあるのがわかるかな。
あ!ほんとだ、「黄」とか「紺青」とか描いてあるリン!
色を付けたらどんな姿になるか、見てみたいよね。
うん!ぬりえをしてみたいリン♪
そして最後の作品は、「深沙大将図像(じんじゃだいしょうずぞう)」だよ。
すごいはくりょくだリーン!!!
これも玄証が集めたものなんだ。もとは高野山の月上院(げつじょういん)という所にあったんだけど、栂尾(とがのお)の高山寺に移って、その一部が近代以降、愛好家の手に渡ったんだよ。
そうなんだ!それにしても、くびにはどくろのネックレスをしているし、おひざにはゾウりんがいるし、おへそにもおかおがあるし...これはいったいどんな人なの?
深沙大将は、『西遊記』の三蔵法師のモデルになった玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)(602~664)がインドに行く途中に砂漠で会った神様なんだ。
こんな神様に砂漠で出会ったら、三蔵法師さんもビックリしただろうね!
この絵柄は、どうも中国から新しく伝えられたばかりのようなんだ。なぜかというと、中国に3度行ったと自慢し、源平の兵火で焼けた東大寺大仏の復興事業にあたった重源(ちょうげん)(1121~1206)が高野山で仏師として有名な快慶に作らせた木像が残っていて、この絵柄とほとんど一致するんだよ。重源さんって、中国を知っているっていうことを強みにして尊敬されていたからね。高野山の像もわざと最新式に作ったんだと思う。また、仏像って、こういうふうに絵から立体化されたものが多いんだよ。
ふーん、平面の絵から立体の彫刻になっていったんだね。言われてみたら、中国風に見えてきたリン...!
...トラりんはやっぱりだまされやすそうだね。
うでにぐるぐるまきの、ヘビりんのおかおが好きだリン☆
いいところに気付いたね。こういう風に正面向きに描くって実は意外に難しいんだよ。蛇の頭だったら、普通は特徴の出しやすい横側から描くことが多いじゃない。それを思うと、この絵はとても上手だね。
怒っているみたいでおもしろいリン!おともだちも展示室に確かめに来てね♪
また、今回の特集展示に関連して、2F-2では「密教図像にみるコピー技術」をテーマにした展示をおこなっています。特集展示に併せて、よろしければそちらもご覧ください。
こぴぃ技術の美がたっぷリンだリン♪
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図録もあるリン!じゃーん☆
図録・目録・関連書籍等
研究資料としても貴重なので、上田コレクションの全貌を伝えるものがあると便利だろうと思って、この図録を作りました。パラパラ見ているだけでも意外と面白いと思いますので、興味がわいたらお求めください。
ねぇねぇ、ぬりえも欲しいリン♪
じゃあ、また紙に油を塗ろうか。
そこから!?
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■会期:
2024年8月7日(水)~ 9月8日(日)
■会場:
京都国立博物館 平成知新館1F-2・3
■休館日:
月曜日
※ただし8月12日(月・休)は開館、翌13日(火)休館
■開館時間:
9:30~17:00(入館は16:30まで)
金曜日は20:00まで開館(入館は19:30まで)
■関連土曜講座:
8月24日(土)13:30~15:00
「上田コレクションの密教図像の価値」
講師:大原 嘉豊(京都国立博物館 教育室長)
■関連展示:
2F-2仏画展示「密教図像にみるコピー技術」
博物館ディクショナリー236号「密教図像でまなぶ、昔のコピー技術」(PDF)
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