こんにちリン!
トラりんだリン!
(トラりん)
京都の夏が始まったリン!じりじり熱いリン...!
噴水にとびこみたいきぶんだリン!
(井並研究員)
「京の夏 虎も飛び込む 水の音」ってね。
井並研究員!
優雅に一句詠んでいる場合じゃないリン!こんなに暑いのになんでわざわざお外で待ち合わせにしたの?
見て、トラりん。ここからだと明治古都館が良く見えるでしょ。
うん。
いい眺めだよね(しみじみ)。
それだけ!?
まぁ、研究員には、こうしてトラりんと明治古都館を眺めたくなるときもあるものさ。
真夏に狂気の沙汰だリン!溶けてバターになってしまうリン!
それじゃあ、トラりんがバターになる前に...
(涼しい)展示室にれっつごー!
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ひんやり展示室だリン♪
落ち着いてよかった。
さて、今回いっしょに見に行くのは修理完了記念 特集展示「重要文化財 釈迦堂縁起」だよ。突然だけど、トラりんは狂言って知っているかな?
うーん?
じゃあ、歌舞伎は?
かぶきあげ、おいしいリン(じゅるり...)
おやつの話となると途端に生き生きするよね。狂言は、歌舞伎や能と同じような、日本の伝統芸能だよ。その狂言を上演する「大念仏狂言」という催しをするお寺が、京都に3つあるんだ。壬生寺、引接寺(千本ゑんま堂)、そして清凉寺(嵯峨釈迦堂)だよ。
ん?「釈迦堂」って、さっき展覧会のタイトルで出てきたリン!
そう!今回の展示は「嵯峨大念仏狂言」でも知られる清凉寺の本尊についての絵巻なんだ。
清凉寺の本尊は、釈迦如来像。伝説でインド・中国・日本を渡ってきた「三国伝来」の像として語られる、仏教美術史上の名品だよ。奈良国立博物館の「超国宝展」でも展示されたので、ご覧になった方も多いのでは。このお像は昔からとても名高く、そのためお寺も「嵯峨釈迦堂」と呼ばれているんだ。
清凉寺=釈迦堂ってこと?
そういうこと!ちなみに狂言でも、清凉寺だけ「釈迦如来」という演目が演じられるんだ。
へー!みんなが慕っているお釈迦さまなんだね!じゃあ釈迦堂縁起の「縁起」ってなぁに?
縁起とは、社寺(神社やお寺)の歴史や、本尊・祭神の由来を語るものだよ。
じゃあ今回は、清凉寺のご本尊の釈迦如来像の「ゆらい」を描いた絵巻ってこと?
その通り!じゃあさっそく、絵巻のはじめ、巻第一から見ていこう。最初は、お釈迦さまの一生を表すところから始まるんだ。これは、有名なお釈迦さまの誕生シーンだよ。
女の人の脇の下から、小さな人が出てきているリン!
お釈迦さまが、摩耶夫人というお母さんの右脇から生まれた場面なんだよ。このすぐあとに七歩進んで、右手で天を、左手で地を指して「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と唱えたんだ。
生まれてすぐに!?さすがお釈迦さまだリン...1歳のボクでもそんな難しい言葉知らないリン...!
お釈迦さまは、もともとインドの王族の子だったんだ。物質的には豊かな暮らしをするわけだけど、心は満たされないままだった。そこで19歳(出家時の年齢は絵巻の詞書による)で出家し、苦しい修行に身を投じるんだ。
どんな修行?
たとえば断食をして、米を1日1粒しか食べなかったり...
えぇ!?おなかぺこぺこリンになってしまうリン(泣)
肉体を苦しめることで精神を高めようとする修行だからね。だけど、どんなに厳しい苦行をしても、なかなか求めている境地に至れなかったんだ。そこで、沐浴をして身を清めて、スジャータという女性から1杯の乳粥を献じられるんだよ。
このおわんにはいったものは、おかゆなんだね。胃にやさしいリン...
そこで気力が回復して、悟りへの準備に入るんだ。菩提樹の下で瞑想をして、ブッダ(悟った人)となるんだよ。
あ、草を刈っている人たちがいるリン!
座るところに草を敷いてもらおうと、帝釈天が変身してるんだ。こうしてお釈迦さまが悟りに到達するお手伝いをしているよ。
ふかふかでやわらかそうな草だリン!色も鮮やかだね!
修理したことで折れが進んでいた画面が平滑になったから、この絵の鮮やかな色が一層際立つようになったね。さて、お話は飛んで、次に紹介するのは巻第三だよ。悟りに至ったお釈迦さまは、その教えをお母さんの摩耶夫人に伝えたいと思うんだ。だけど摩耶夫人は忉利天(とうりてん)という別の世界にいたので、お釈迦さまはその世界に行ってしまう。そこでお釈迦さまがいなくなってさびしいよ~って思った優填大王(うでんだいおう)という王様は、あることをするんだ。まずは右側のシーン、何をしているか、分かるかな?
王様が丸太を背負っているリン!!!
そうなんだよ。優填大王は、釈迦の姿を木で彫って表したいと考えるんだ。そのための材料となる栴檀(せんだん)という香木を、自分で運んでいるんだよ。
お釈迦さまの姿を木に彫る...?ということは...
仏が彫られたお像になる...つまり?
仏像だリン!?
まさに!伝説では、初めてつくられた仏像ともいわれているよ。左側のシーンでは、「毘首羯磨(びしゅかつま)」という技芸の神さまが工匠に化けて、釈迦像を彫るようすが描かれているね。
ほんとだ!ボク、仏像が彫られるようすを見るのは初めてだリン!
ところで、びしゅかつま...?どこかで聞いた名前だリン...
ビビビ...(トラりん、思い出して...明治古都館のさんかくの部分にどんな彫刻があったか...)
※井並研究員はテレパシーを送っています byトラりんスタッフ
さ、さ、さんかく?さんかく、さんかくの...
ビビビ...(いいぞトラりん...その調子...)
なまやつはし?
(だめだこりゃ。展示室を見終わったら、もう一度明治古都館を見に行かないと)
で、お話を戻すと、こうして優れた工匠の手で彫られた、とってもスペシャルな仏像は、インドや中国のいろんな王朝を転々とすることになるんだ。
とくに、鳩摩羅琰(くまらえん)というお坊さんが亀茲(きじ、中国の西域)の国に運ぶ場面が有名だよ。トラりん、チラシを持っているかな?
あれ?よく見ると、お坊さんが仏像におんぶされている...?
昼は鳩摩羅琰が像を背負って険しい道を進むんだけど、夜は像が背負って進んでくれたという奇跡を描いているよ。
生きた釈迦の姿を写した像もまた、自分の意思を持って生きていると信じられたんだ。
8月5日(火)からの展覧会後期で展示する予定だから、楽しみにしていてね。
チラシの場面は後期に見られるんだね!楽しみだリン!
博物館ディクショナリーでも紹介しているよ♪
博物館ディクショナリー242号「仏像のはじまりの伝説」(PDF)
さて、最後に紹介するのは巻第五。
10世紀、釈迦像は中国歴代王朝をめぐりめぐって、宋という国の皇帝のもとで安置されていた。そこに、奝然(ちょうねん)という日本のお坊さんが訪ねてくる。この奝然さんが、巻第五の主人公なんだよ。
奝然さん、どんなことをするのかな?
話に聞く伝説の釈迦像との対面を果たした奝然さんは、仏教の教えを日本で広めるために、このすばらしいお像の模像を作って、日本に持ち帰りたいと皇帝に願い出るよ。
皇帝に!なかなか思い切ったリン!
太宗皇帝はこれを許して、名匠にお像を彫らせたんだ。
えー!よく許してもらえたリン...
奝然さんの真摯な想いが伝わったのかもしれないね。こうしてつくられた模像は...
どうなるの!?
後期展示に続く。
えー!
そんなぁ!気になるリン!!!
絵巻は長さが決まっているからね。展示スペースの関係で、出したくても全部出せないんだよ~。だから前期と後期、どちらも見に来てもらいたいけど、まとめて見たいおともだちのために、スペシャル図録 をつくったよ! 図録・目録・関連書籍等
前期展示で見られない場面も、ぜんぶ載っている?
全場面が載っているよ!この作品のカラー図版が全場面掲載となるのは、なんとこれが初めてなんだ。修理の細かい報告も収録したよ!
それは、「がくじゅつてきかちがたかい」ってやつだね!
お、トラりんが賢そうな言葉を使っている。まさに、トラりんの言う通りで、修理後初公開の貴重な機会。図録で予習復習しつつ、展示室でぜひ一新した鮮やかな絵をナマで観てほしいな。
あ!「ナマ」で思い出した!なまやつはしが冷蔵庫で冷えているリン!おやつに食べるリン!
あ!こっちもなまやつはしで思い出した!トラりん、明治古都館をもう一度見に行くよ!
えー、なんで!?ゼッタイそれ今じゃないリン!お外暑いリン!
しょうがないなぁ...明治古都館正面のさんかくの部分、破風(はふ)の彫刻を、あとでちゃんと見るんだよ。
明治古都館の、さんかく?
今回は特別にトラPadで見せてあげよう。
あ!さっきみた、えーっと、えーっと...
「びしゅかつま」ね。京博の館蔵品データベースには、この破風装飾の元となった木彫原型が紹介されているよ。
京都国立博物館 館蔵品データベース
ほんとだ!「美術工芸の神とされる毘首羯磨」だって!
釈迦像を彫った工匠に宿った美術工芸の神こそ、この毘首羯磨。さっき展示室で見た時と同じように、手に槌(つち)を持っているね。京博の守り神が、こうして作品に登場するお姿を見ると、なんだか感動するよね。
あとでちゃんとごあいさつしておくリン!
(涼しい)展示室で待っているリン!
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■会期:
2025年7月8日(火)~8月24日(日)
[会期中、巻替あり]
前期展示:2025年7月8日(火)~8月3日(日)
後期展示:2025年8月5日(火)~8月24日(日)
■会場:
京都国立博物館 平成知新館2F-2・3
■休館日:
月曜日、7月22日(火)、8月12日(火)
※2025年7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)は開館
■開館時間:
9:30~17:00(入館は16:30まで)
金曜日は20:00まで開館(入館は19:30まで)
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\毘首羯磨と伎芸天!(石畳熱い...by井並)/