こんにちリン!
トラりんだリン!
宋元仏画展もあっという間に後期展示だリン!
前期展示とはがらりと変わったって聞いているけど、展示室はどうなっているのかな?

(森橋研究員)
こんにちは、トラりん!
(トラりん)
森橋研究員!
なんでだろう(笑)、久しぶりって感じがしないね?
いっしょに宋元仏画の世界を旅しているからだリン!
■漫画「トラりんと宋元仏画」
トラりんの大冒険をいつもハラハラしながら見守っているよ。さあ、いよいよ後期展示だね!後期にもすばらしい作品がたくさん登場するから、楽しみにしていてね!

それじゃあ宋元時代に...ひとっとび!
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まず紹介するのは国宝「無準師範像(ぶじゅんしばんぞう)」だよ。

んんん?なんだか見たことあるようなお坊さんだリン...
覚えてくれていてよかった!実は2年前に開催した特別展「東福寺」でも紹介した作品なんだ。虎ブログにも登場しているよ!
■虎ブログ:特別展「東福寺」を見に行くリン♪ Part 1
あ、ほんとだ!東福寺に伝わっているんだね!
虎ブログでもある通り、無準師範は東福寺をひらいた円爾(えんに)さんが南宋に留学していた時の禅のお師匠さんなんだ。
あれ?「南宋」ってことは、宋元時代だリン!じゃあ、この絵は中国で描かれたものなの?
そういうこと!蒼海を越えて結ばれた師弟の絆と禅宗の法脈を象徴する肖像画として、今回も紹介しているんだよ。さらにこの無準師範、当時の南宋の皇帝も認める大変すぐれた名僧で、円爾だけではなく今回の展覧会のキーパーソンの師匠でもあるんだ。誰だと思う?
うーんと...
顔輝(がんき)さん!
うーん、残念(笑)!でもよく名前を覚えていたね。確かに顔輝は同時代の重要な画家だけど、お坊さんじゃないよ。
(顔輝さんは森橋研究員の推しだから覚えているリン)
正解は、牧谿(もっけい)!
今回の展覧会でも大きく紹介している牧谿は、無準師範のお弟子さん。牧谿自身は日本に来たことはないけど、その絵画はたくさん日本に伝わって、日本の絵師たちに大きな影響を与えたんだ。
東福寺をひらいた円爾さんと、日本に大きな影響を与えた画家の牧谿さんのお師匠!無準師範さんってすごい人だリン!
無準師範像は、宋時代の肖像画の代表でもあるんだよ。お顔は迫真的だけど、ただ似せるだけじゃなくて、描かれた人の徳や人格も表現しているんだ。無準師範の禅僧としての威厳や弟子を見守るあたたかな人柄などが伝わってくるよね。
肖像画としてもすごい作品なんだね!表情も生き生きとしていて、お弟子さん想いの無準師範さんが、今にも優しく語りかけてきそうだリン!
次に紹介する作品は重要文化財「四睡図(しすいず)」だよ。

ん?あれれ?ここに虎がいるリン!!!
よく見つけたね!虎とともに眠る3人も見えるかな?
え?3人もいる?
これは元時代の作品でね。繊細な線描だから少しわかりにくいかもしれないけど、白描画(はくびょうが;線画)の手法で描かれているよ。画面を埋め尽くすような線のなかに美しさやおもしろさが追及されているね。雲が立ち込める渓流沿いの松林のあいだで、豊干(ぶかん)と虎と寒山・拾得(かんざん・じっとく)がぴったりと身を寄せ合って眠っているよ。どんな夢を見ているんだろうね。
寒山・拾得って、「ふしぎな2人組」だリン!そして豊干さんは虎に乗っていたお坊さんだリン!
そうそう、3人とも、漫画「トラりんと宋元仏画」にも登場してくれたね!

ちなみに「四睡図」は人気の画題で、日本で描かれた別の作品も今回展示されているよ。探してみてね!
虎もいる?
もちろん!今回の展覧会では、いろんな虎が登場しているからトラりんも楽しいと思うよ。さて、次に紹介するのはお待ちかね!国宝「観音猿鶴図(かんのんえんかくず)」だよ。

やっと実物が見られたリーン!
後期展示のメインビジュアル!「観音猿鶴」の名前のとおり、観音さまを中心に左右に猿と鶴をそれぞれ描いた3幅対で、水墨で描かれているよ。
大きな作品ではくりょくまんてんだリン!
3幅対だから、1幅ずつ紹介するね。まずは中央、観音さまだね。岩窟のなかで座禅して静かに瞑想しているよ。画面の前に立つと、水辺の湿潤な空気感など、光や大気の様子が伝わってくる気持ちになるんじゃないかな。周囲の薄暗さと対照的な白い衣は、観音さまの清らかな姿を強調しているね。
奥行きを感じる絵だリン...見ていると、こころがすっと静かになるリン...さすが牧谿さんだリン!
そして、トラりんも大好きな、牧谿猿こと、右幅のテナガザル!
おサルりん!
牧谿の描いたこのテナガザルは、日本にはいない種類だよ。でも日本の画家が牧谿の絵を勉強してたくさん描いたから、いろいろな作品の中で見かけたことがあるんじゃないかな。斜めに倒れかけた古木の枯れた荒々しい様子とは対照的に、もふもふとした猿の姿が愛らしいよね。猿のお母さんがぎゅっとこどもを抱きしめているでしょう?「断腸の想い」という故事でも知られるように、猿はこどもに深い愛情をそそぐイメージを持っているんだ。観音さまの慈愛を象徴しているのかもしれないね。
こどもを想うお母さんの気持ちを描いているんだね!
\もふっ/
そして、左幅には、竹林から歩み出た鶴が描かれているね。タンチョウヅルの頭に朱を入れているよ。この作品だけ色が使われているのもポイント。瞑想中の観音が静寂をあらわす絵なのに対して、一声高く唳(な)く動的な鶴が対照的だね。
ツルりん、なんて鳴いているのかな?耳を澄ませてみよう... 
おーい、トラりーん...
あれ?ほんとに何か聞こえてきた!
トラりん、トラりん。ツルりんじゃなくて福士研究員が呼んでいるよ。
え?福士研究員!?
(福士研究員)
トラりんが来てくれるのをツルりんのように首を長~くして待っていたよ。さあ、中国絵画から影響を受けた日本の絵画も見に行こう!
楽しみだリーン♪
先ほど紹介された「観音猿鶴図」から影響を受けて長谷川等伯(はせがわとうはく)が描いた、重要文化財「枯木猿猴図(こぼくえんこうず)」だよ!

牧谿さんのおサルりんの子孫みたいだね!
牧谿の描いた猿とよく似ているよね。それもそのはず、長谷川等伯は牧谿の「観音猿鶴図」を見て、その表現に学んでこの作品を描いたんだ。
「観音猿鶴図」は、かつては足利将軍家のコレクションだったんだけど、等伯が能登から上洛する頃にはすでに大徳寺に所蔵されていたよ。上洛後、等伯は大徳寺との関係を深めたから、その縁で見ることができたんだと思うんだ。
ふむふむ、牧谿さんの作品を見た等伯さんは、おサルりんのもふもふ具合に大きな衝撃を受けたんだね!
日本には生息していないテナガザルだけど、ふわふわした長い毛の質感も含めて見事に表現されているよね。なんだか人間みたいな表情をしているし、親子の情愛が伝わってくるような優しさがあると思うんだ。
笑っているように見えるリン♪
それと、猿だけじゃなく、樹木の描写も牧谿の絵を参照していることがわかるね。当時の日本の画家にとって中国絵画は憧れの的だったけど、等伯はとりわけ牧谿のことを尊敬していたんだよ。
ボクたちが「日本っぽい」と思っていた絵の表現は、実は中国から学んでいたんだね!でも、中国絵画と日本の絵画、どこがというのは難しいけど、雰囲気がちがうリン!
これはどの時代の美術についても言えることだけど、日本は中国を手本にしながらも、常にそれとは異なる表現を生み出してきたんだ。この等伯の絵にしても、モチーフの形はよく似ているけど、画面から感じられる雰囲気は全然違うよね。日本の画家がいかに多くのことを宋元仏画から学んでいたかと同時に、いかにそれとは異なる表現へと変容させたかという点も見てほしいな。
「るーつ」をたどってから日本に戻ってくると、新しい発見がたくさんあるね!福士研究員、ありがとリン!森橋研究員にも、おともだちへのメッセージをもらいたいリン!
紹介してくれてありがとう、トラりん。前期展示と後期展示は作品が大きく入れ替わり、また違った雰囲気でお楽しみいただけると思います。中心としている牧谿の「観音猿鶴図」に関連した作品も多く、展覧会の全体のなかで牧谿の絵画の特性や日本に果たした功績などを感じていただけるのではないかと思います。宋元というダイナミックな時代背景、仏画を生み出してきた人々の信仰、またそれらを敬意をもって大切に伝えてきた日本の歴史や文化など「宋元仏画」を通して考えるきっかけになれば幸いです。
うーん、もう一回最初から、見に行きたくなるリン!
それじゃあ、みんなでいっしょに...
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いざ!宋元時代の中国へ!
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■会期:
2025年9月20日(土)~11月16日(日)
■会場:
京都国立博物館 平成知新館
■休館日:
月曜日、10月14日(火)、11月4日(火)
※ただし、2025年10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)は開館
■開館時間:
9:00~17:30(入館は17:00まで)
金曜日は20:00まで開館(入館は19:30まで)
■記念講演会
11月8日(土) 「宋元の道釈人物画―境界をうつろう聖者―」
講師:森橋 なつみ(京都国立博物館 研究員)
【時間】13:30~15:00
【参加方法】特別展「宋元仏画--蒼海(うみ)を越えたほとけたち」記念講演会よりお申込みください。
【申込期限】11月5日(水) 12:00(定員に達した時点で受付終了)
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Zzz...(特別出演:展覧会副担当・上杉研究員)