こんにちリン!
トラりんだリン!
きょうは末兼研究員と特集展示「新時代の山城鍛冶―三品派と堀川派―」を見に行くリン!
(末兼研究員)
どどん!
(トラりん)
末兼研究員!
控えおろう、この虎印が目に入らぬか!
ちょっぷ!
ぐ、や、やられたぁー!無念...
そのかぶとはもともとボクのだリン!
すみませんでした、トラりん将軍!どうぞおかぶりなすって!
ところできょうはどんな展示を見るの?
今日は刀剣の特集展示を紹介するよ。刀剣の分野では、慶長年間(1596~1615)を境に、それ以前に作られた刀剣を「古刀」、それ以降に作られた刀剣を「新刀」と呼び習わしているんだけど、今回の展示では、新刀期の京都の刀鍛冶、三品派と堀川派に焦点をあてているんだ。
慶長年間って桃山時代から江戸時代のころなんだね!戦国時代だリン!刀にはどんな特徴があるのかな?
新刀は、戦乱などで荒廃した京都が復興する過程で生まれたんだけど、そうした復興への活力に満ちた気運が作品にも反映されていて、華やかでエネルギッシュな魅力があるよね。
三品派と堀川派は、新刀期の京都の刀鍛冶の双璧をなす存在。分家して各地に散らばり、多くの名工を輩出したよ。
京都で活躍した刀鍛冶、三品派と堀川派!カッコいいリン!それじゃあ、さっそく...
展示室にれっつごー!
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展示室に入る前に、かぶとをとったリン☆
大きなかぶとは、あぶないからね。さて、まず最初に紹介するのは、重要美術品「刀 銘 丹波守吉道(たんばのかみよしみち)」!
かたなも、末兼研究員のおてても、キラリン✨しているリン!
こちらは三品派の祖・大道(おおみち)(初銘 兼道(かねみち))の子である、初代・吉道(よしみち)の代表作だよ。
そもそも、三品派ってどんな人たちなの?
三品派は、もとは美濃国(現・岐阜県)関鍛冶にルーツをもつ刀工集団で、天正から文禄頃に京都へ移住してきて、一大流派となったよ!
岐阜県のあたりから京都に来た刀鍛冶の人たちだったんだ!どんな刀を作ったのかな?
吉道といえば、「簾刃(すだれば)」と呼ばれる水の流れを思わせる独創的な刃文(はもん)を創出したことで名高い刀工なんだ。
「はもん」って?
刀をつくるときに、刀全体を熱したあとに水で急激に冷却する「焼き入れ」という工程があるんだけど、その際に鉄の組織が変化して生まれる文様のことなんだ。ほら、刃先の部分と鎬(しのぎ・刀身の刃先と背中側の中間にある稜線)の部分のあいだに、文様になっているところがあるでしょ?ここに刀の個性が出やすいよ。
あ、ほんとだ!刀によってちがう文様が入っている!
全部同じに見えていたリン☆
な、なんてこった!
「日本刀 鑑賞ポイント」パネルを展示室に設置しているから、参考にしてみてね。
日本刀 鑑賞ポイント(PDF)
「はもん」は覚えたリン!
(トラりんの記憶力、いまいち不安だけど...)
さて、次に紹介するのは有名人が持っていた刀。トラりんも何度か見ているから、懐かしいんじゃないかな。
覚えて...いる...気がするリン...
(いまいち不安...)こちらは幕末の志士として有名な坂本龍馬の愛刀で、彼の死を看取った唯一の目撃者ともいえる「刀 銘 吉行」。三品派の刀工・陸奥守吉行(むつのかみよしゆき)が手掛けた刀だよ。
あ!坂本龍馬さんは知っているリン!
ほらほら、虎ブログでも「刀 銘 吉行」のことをお勉強しているじゃないかー。
■虎ブログ:坂本龍馬さんて、どんな人?
そうだったリン、龍馬さんがとっても大切にしていた刀だリン...(涙)
それじゃあ、龍馬とお別れした後に、この刀がどんな運命をたどって来たのか説明しよう。
龍馬の死後、まず北海道に移住した坂本家に伝わったんだけど、大正2年(1913)の釧路大火で、暗殺の際に一撃を受けたと伝わっている拵(こしらえ)は焼失してしまい、火災熱により刀身の反りが伸び、刃文も消えてしまったんだ...。
「はもん」が!!!!
火事で焼けて、刀身以外の部分がなくなったり、形が変わって「はもん」が消えたり...大変なことがいっぱいあったんだね!
現在の姿は、火災にあった後、札幌市の研師・富田秋霜(とみたしゅうそう)の手によって研磨にかけられ、直調(すぐちょう)、つまり直線的な刃取りがなされたもの。でも実は、前回の研磨から100年の時を経たためか、本来の刃文が黒い影のようにうっすらと見えるんだ。ほら、見てごらん?
うーん...?
なかなか見えないよね。高性能カメラでの撮影にも映らないほどかすかなんだけど、角度によってはうっすらと見えるよ。だからこれは展示室で、ぜひ肉眼で見てもらいたいな。
あ!この角度なら見えるかも...
これが陸奥守吉行が得意とした、拳形丁子(こぶしがたちょうじ)と呼ばれる本来の刃文だよ。こぶしを突いたように、大振りのこぶのような形が表れているからこの名前がついたんだ。拳形丁子がはっきりとわかる作品も同じ展示室にあるから、見比べてみてね。
分かったリン!今はうっすらとしか見えないけど、もともとの「はもん」は、もっとはっきりしていたんだろうね!
龍馬の手紙に、この刀(吉行)は京都の人々に丁子乱れの名人・粟田口一竿子忠綱(あわたぐちいっかんしただつな)の作品のようだと評されたことが記されていて、かつてはとても見事な刃文の刀だったんだと思うよ。京博での展示は2018年の特別展「京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ」以来となるから、ぜひじっくりと鑑賞してね。
刀の運命も、人の運命と同じくらい、ドラマチックなんだね!
歴史があるものには、いずれも物語があるよね。そうしたストーリーを知れば、ますます作品に興味がわいてくるよね。そして最後に紹介するのは、とっておきの2口の短刀だよ!
あ!チラシに載っていた刀だリン!
いずれも作者は堀川派の祖・国広。国広は日向国(現宮崎県)の出身で、九州から関東まで諸国を遍歴して、慶長初年頃からは京都一条堀川に定住して作刀したよ。
今度は堀川派の刀だリン!
1F-4展示室には三品派、1F-6展示室には堀川派の作品を展示しているよ。じっくり見比べてみてね。これらの短刀を見て、トラりんが気づいたことはある?
こまかーいお像が彫られているリン!
そうそう、右側の短刀には毘沙門天、左側の短刀には大黒天が彫られているよね。彼の作品にはこうした尊像をあらわす例が多くあり、彼の宗教観に根差すものだと思われるよ。
なんだか、お守りになりそうな短刀だね☆
先に、慶長年間以前は古刀と呼び習わしていると言ったけど、銘に刻まれた「天正」は国広が京都に定住し始める慶長より前の年号。これら2口の短刀は、ちょうど端境期に作られていて、古い時代の刀の風情を残しつつも、覇気のある新しい作風の萌芽が感じられるんだ。
時代の変わり目にあらわれた刀たち!じっくり見ているうちに、刀たちがたどってきたドラマが聞こえてきそうだリン♪
お、トラりんにも、刀の声が聞こえるようになってきたかな?(笑)
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あれ?ところで、ここも刀の展示室じゃない?
その通り!1F-5展示室では特別公開「名刀再臨─時代を超える優品たち─」も開催中!
刀の展示室が、3部屋もあって大迫力!刀が大好きなおともだちにはとっても嬉しい展示だね!
これだけたくさんの刀を見比べられる機会だから、もともと刀に興味があるおともだちも、刀のことはまだよく分からないおともだちも、ぜひこの機会に楽しんでもらいたいね!
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ねぇねぇ、展示室を出たからかぶと返して―!
ふっふっふ、かぶともよいが、きょうは特別に、拙者が鍛え抜いた宝刀を授けてしんぜよう。
てってれー!トラりん丸!
わ!刀だ!
ちゃんとおめでたい七福神も入れておいたよ。寒さに負けずに、強い子に育ってね!
ありがとリーン!新時代のトラりん丸だリン♪
展示室で待っているリン!
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■会期:
2025年1月2日(木)~ 3月23日(日)
■会場:
京都国立博物館 平成知新館1F-4・6
■休館日:
月曜日
※ただし、1月13日(月・祝)、2月24日(月・休)は開館し、1月14日(火)、2月25日(火)休館
■開館時間:
9:30~17:00(入館は17:00まで)
金曜日は20:00まで開館(入館は19:30まで)