こんにちリン!
トラりんだリン!
今日は、特集展示 新発見!蕪村の「奥の細道図巻」を見に行くリーン♪
一緒に展示を見てくれるのは、福士研究員だよ!
福士研究員☆久しぶり~!
(福士研究員)
...誰だっけ??
(トラりん)
ええええええ!!!!!
ほ、ほんとに忘れちゃったの?!
ごめんごめん、前回の登場から少し間が空いたから、つい忘れたふりをしてみたよ!
も~、悪い冗談はやめてほしいリン!
ところで今日は、蕪村さんの「奥の細道図巻(おくのほそみちずかん)」を見に行くんだよね!ボク、前に一緒に見たのを覚えているリン!
さすがはトラりん、2016年の特集陳列「生誕300年 与謝蕪村」のことだね。このときは蕪村の作品15件を展示していて、京博が所蔵する「奥の細道図巻」も出ていたよね。
そうそう、虎ブログで紹介したよ!
特集陳列「生誕300年 与謝蕪村(よさぶそん)」を見にいくリン♪
わー6年前の写真なのに、福士研究員、ちっとも変わってないねー。
うわー、トラりん棒読みやわー(笑)
まあ二人が仲良しなのは変わらないけどね!
トラりんは蕪村がどんな人だったか覚えてる?
うん!蕪村さんは、江戸時代の人で、俳句も絵もたくさん残した人!
それと、『おくのほそ道』を書いた松尾芭蕉さんのことが大好きだった人だよね?
トラりん、よく覚えてるね!俳諧※も絵画も得意とした蕪村は、俳画(はいが)という、あっさりとしていてしかも味わい深い絵画を得意としたんだ。「奥の細道図巻」は、その真骨頂ともいえる作品なんだよ。
※俳諧(はいかい)...江戸時代に流行した、交互に俳句を詠む「連歌(れんが)」のこと。連歌のさいしょの句・発句(ほっく)が、俳句のもととなった。
たしか芭蕉さんの『おくのほそ道』は、蕪村さんの時代にリバイバルブームがあったって言っていたよね。
そうだよ。
蕪村は、芭蕉が没してから20年以上経って生まれているんだ。
当然ながら、二人に面識はないんだけど、蕪村の俳諧の師である早野巴人(はやのはじん)は、嵐雪(らんせつ)・其角(きかく)という芭蕉の有力弟子に師事した人だったんだ。だから、俳諧の教えを受け継いでいるという点で、二人は繋がっているとも言えるね。
なるほど~!ところで、芭蕉さんが残した『おくのほそ道』って、どんな作品なの?
『おくのほそ道』は、芭蕉が門人と一緒に江戸を出発して、東北・北陸などめぐった旅をもとに書いた文章だよ。旅先で見た風景だけでなく、各地で出会った人々との交流などについても書かれているんだ。もちろん、そこでつくった俳句もたくさん含まれているよ。
面白そう!
その『おくのほそ道』の文章をすべて写し、関連する絵を添えたのが、蕪村の「奥の細道図巻」なんだ。
蕪村は、巻物や屏風の形でいくつかの奥の細道図を残していて、これまでは4件の作品が知られていたんだ。京博所蔵の作品も、このうちの1件だよ。どの作品も蕪村の代表作として高く評価されていて、4件のうち3件もの作品が重要文化財に指定されていることもそれを物語っているね。
そして、今回5件目となる作品が新たに発見されたんだ。
蕪村の手紙からは、いま知られていないものも含めて、およそ10件の奥の細道図を描いたことがわかるんだけど、新発見作はその中でも一番早い時期に制作されたものなんだよ。
わあーーーーそれは大発見だリン!
蕪村の時代には、『おくのほそ道』はすでに出版されていて、多くの人に読まれていたんだ。蕪村もその刊行本からテキストを写したことがわかっているよ。でも、どの場面をどんなふうに絵にするかは、蕪村自身の創意工夫だったんだ。
蕪村さんのセンスとオリジナリティが光っているリン!
過去の作品が新たな作品を生み出す原動力になる、その創造の連鎖が面白いねえ。
創造の連鎖って、すてきな言葉...期待が高まるリーーーン!
こちらが今回新たに発見された作品「奥の細道図巻(おくのほそみちずかん) 与謝蕪村(よさぶそん)筆 江戸時代 安永6年(1777)」だよ。
これが新発見の作品!!この絵はどんな場面なの?
この場面は、巻頭の旅立ちの場面。千住(せんじゅ・現在の東京都足立区)まで見送りに来てくれた人たちとも別れ、芭蕉と門人の曾良(そら)との旅がいよいよ始まるところ。
細部まで丁寧に描くタイプの絵とは違って、簡略であっさりしているんだけど、しみじみとした味わいがあって本当に素晴らしいねえ。
前を行く人が、芭蕉さんと曾良さんかな?みんな名残惜しそうだリン...☆
蕪村自身が、この作品は自分でも欲しいくらいだと言っているんだけど、それも納得の出来映えだと思うよ。ケースの長さが足りなくて、すべてを広げられないのが残念。。
えええ(泣)全部見たいリー――――――ン☆
そう言われると思って、全場面を掲載したリーフレットを特別に作ったよ!
会場で配布しているから、ぜひ合わせてみてほしいな。
リーフレット
続いてこちら、「重要文化財 奥の細道図巻(おくのほそみちずかん)下巻 与謝蕪村(よさぶそん)筆 江戸時代 安永7年(1778)(京都国立博物館所蔵)」だよ!
こちらの絵も、かわいいリン!
こちらは、以前から京博が所蔵している作品。
新発見作の翌年に制作されたんだ。基本的な内容は大体同じなんだけど、絵の場面が増えていたり、同じ場面でも描き方を変えていたり、比べてみるとたくさんの違いがあることがわかるよ。絵だけじゃなくて、字の書き方にも違いがあるからじっくり見てほしいな。
文字にも注目だリン!この人は何をしているの?
これは、出羽国(でわのくに・現在の山形県)で芭蕉たちの道案内をしてくれた若者を描いているよ。この若者は腰に刀をさし、樫の杖を手にした頼もしい若者だったと芭蕉は書いているんだ。山賊も出るという薄暗い山道を行く不安げな芭蕉たちの様子と、堂々とした若者の対比が面白いねえ。
山賊も出る薄暗い山道...!!!!ガクガクブルブル......
大丈夫!トラりんが歩いてたら、山賊の方から逃げていくよ!
こうやって説明を聞きながら見ると、作品が生き生きして見えるリン!!
そして最後はこの作品。「蕪村筆奥の細道図巻模本(ぶそんひつおくのほそみちずかんもほん)横井金谷(よこいきんこく)筆 江戸時代 19世紀 (岡村健守氏寄贈・京都国立博物館所蔵)」だよ。
ボク、作品を見ているうちに、蕪村さんの絵が好きになってきちゃった☆
じつは、これは蕪村ではなく、その画風を学んだ横井金谷(よこいきんこく)という画家が描いたものなんだ。
なんだってええええええ!!
蕪村さんの『奥の細道図巻』じゃないの!?
先に紹介した京博が所蔵している作品を、ほぼ忠実に写しているんだ。写しではあるけれど、強い墨の使い方などには金谷らしさもあって、それが独自の魅力になっていると思うよ。写真とは違うから、おのずと描き手の個性が出るところがいいよね。
そう言われたら、金谷さんの個性を感じてきたよ。
ええと、つまり、芭蕉さんの『おくのほそ道』を蕪村さんが絵を入れて文章を写して、それを金谷さんがさらにまるっと模写したってこと?
そういうこと!
これは金谷がたんに個人的な興味から写したというわけじゃなくて、たぶん依頼を受けて写した注文品だと思うよ。それくらい、蕪村の奥の細道図は人気があったということだね!
蕪村さんの「奥の細道図巻」人気、おそるべし!!
それにしても、このふたつの作品が現在京博に所蔵されているということ自体、不思議なめぐりあわせだと思うんだ。なにしろ、ふたつの作品は別々の時期に、まったく違うルートで京博に入っているから、作品同士が引き合う力、縁のようなものを感じるね。
運命を感じるリン!この奇跡のめぐりあわせを、たくさんのおともだちに見てもらいたいね♪
蕪村の奥の細道図はどれも優れた作品だけど、今回の新発見作はまた本当に素晴らしく見事な出来映えの1点。見ているだけで、日頃の疲れやストレスがふっと消えていくような、硬くなった心をほぐしてくれるようなところがあると思うんだ。なんか最近疲れてるなあという人にも、ぜひおすすめしたい展示だよ!そして、蕪村の奥の細道図の出発点となった重要作が初公開されるこの機会を...
どうぞお見逃しなく!(リーフレットも!)
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ところで、福士研究員がお気に入りの俳句はある?
そうだねえ、いまちょうど「鎌倉殿の13人」も放送されているし、
夏草や兵(つわもの)共が夢の跡
かな!これは、芭蕉が平泉に立ち寄った際に詠んだものだよ。
奥州藤原氏の繁栄や、源義経らの戦いも、いまとなってははかない一瞬の夢のようなもので、華々しい戦いの跡もいまはただ草むらが広がるばかり、という情景なんだ。
ここで芭蕉は懐旧の涙に暮れるんだけど、それはたんに過去に思いを馳せているだけではなく、やがては時の流れに押し流されてゆく自分自身の存在のはかなさを思ってのことでもあると思うよ。
蕪村の俳画には、「かわいい」とか「素朴」だけでは足りない、そういう深い情感をもすくい上げる懐の深さがあるんじゃないかな。
あ~なんだか、ボクも旅に出たいな~!福士研究員、一緒に行かない?
いいね!その時はお腹をこわさないように気を付けるね!
※『おくのほそ道』では、旅の途中で曾良が腹の病気になり、離脱してしまいます。
ボクも、山道で山賊に襲われないように気を付けなきゃ☆
いやいや、トラりんが歩いてたら、山賊の方から逃げていくからー。
うわー、福士研究員棒読みー
どこへ行こうかなぁ~
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\おうちで楽しむ京博/
特集展示リーフレット
特集展示「新発見!蕪村の「奥の細道図巻」」リーフレット
博物館ディクショナリー
当館研究員が子ども向けに分かりやすく展示作品を解説しています。
蓮(はす)を愛する人は...
関連展示:2F-5中国絵画展示室「君子の花 蓮」(展示期間は~2022年7月24日)
グレゴリ青山の 深掘り!京博さんぽ
京都在住の漫画家・グレゴリ青山さんが、京都国立博物館を紹介するエッセイ漫画です。
第14回 深掘り! 京博バックヤードその9(写場)
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新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡大防止のためのお願いにご理解・ご協力賜りますようお願い申し上げます。
会期等は今後の諸事情により変更する場合があります。随時、京博ウェブサイトや公式Twitterにてお知らせいたしますので、ご来館の際は最新情報をご確認ください。
※本展はご予約不要でご覧いただけます。
■会期:
2022(令和4)年6月14日(火) ~ 7月18日(月・祝)
■会場:
京都国立博物館 平成知新館1F-2
■休館日:
月曜日 ※ただし、2022年7月18日(月・祝)は開館
■開館時間:
9:30~17:00(入館は16:30まで)
■観覧料:
一般 700円
大学生 350円
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