博物館ディクショナリー

星曼荼羅(ほしまんだら)

 マンダラということばを聞いたことがありますか。マンダラは、仏教のなかでもとくに秘密を重んじる密教(みっきょう)という宗派で用いられる絵画類です。密教の考え方によると、もっとも大切な真理はことばだけでは表わしにくく、絵画などの図形の助けを必要とします。そのひとつがマンダラというわけです。

 マンダラということばはインド語です。漢字で書くと「曼荼羅(まんだら)」とか「曼陀羅(まんだら)」となります。むずかしい字ならびですが、インド語の発音をそれに近い発音の漢字に置きかえただけのことで、そうむずかしく考える必要はありません。もともとの語の意味は、ちょうど馬車や牛車の連結器具のように、いろいろなものを強くむすびつけて集める、ということでした。それが次第に宗教的に解釈されて、整然と集められたホトケの群像を意味するようになったのです。

 マンダラにはさまざまな種類があります。もっとも尊像数が多く、すべてのホトケと神々がつどうマンダラを「両界曼荼羅(りょうかいまんだら)」といいます。これが密教では一番の基礎になる大事なマンダラです。しかし今回は、もっと親しみやすい「星曼荼羅(ほしまんだら)」を取り上げてみましょう。写真の作品がそれです。

  • 星曼荼羅 <久米田寺>
    星曼荼羅 <久米田寺>

 皆さんは星占いのことを知っているでしょう。じつはこの星曼荼羅は、古代の星占いだったのです。まず画面を見てください。四角い図形が三重になっています(画面の上のほうが黒くなっているのは、長い間、お堂の煙にさらされてきたためです。)そこに小さい白い円がたくさん配置され、なかにひとや動物の姿が描きこまれています。星の神たちの姿です。画面まんなかの四角形内部のすこし上方に、金色の円を背負ったホトケがいます。これは一字金輪(いちじきんりん)と名を変えたお釈迦さまで、このマンダラに描かれた星々の世界の支配者です。
 その下の方に、大きなスプーンを横からながめたように小さな円が七つ並んでいます。七つの円それぞれのなかには、神のように冠(かんむり)をいただいた姿があります。これが、星曼荼羅ではもっとも重要な北斗七星(ほくとしちせい)の姿なのです。まんなかの四角内部には、ほかに水星・金星・土星・太陽・月などを表わす惑星たちがいます。

 二番目の四角形(やや青い帯のところ)には、お牛座・かに座・てんびん座・サソリ座などの十二の星座が描かれています。皆さんなじみのところです。そして、一番外側の四角形には、二十八宿(しゅく)という星のホテルの神々がいます。とてもかわいらしい顔をしていますね。このマンダラに登場するホトケと神は、これで全部です。

 ところで、古代のひとはどのように星占いをしたのでしょう。現代の星占いは、十二の星座が大切ですが、古代では、北斗七星のほうが大事でした。生まれた月日によって、自分の運勢を左右する七星はどれかということが決められていました。さらに、占いをする当日が、七星のうちどの星の支配下にあるかということも重要でした。惑星や十二の星座、二十八宿などは、それを補佐する役割を果たしたのです。これらの星々に対して、災害などからのがれられるように、また寿命がのびるようになどと、お祈りをしたのです。

 よけいな話しですが、1994年の夏、あの木星に大彗星群が衝突する天体ショーがありました。この星曼荼羅では、まんなかの四角形の中段右端に木星の神がいます(エビみたいな形のサソリ座の左どなり)。すわった男性の姿です。よく見てください。もしかしたら、木星神のほっぺたに、衝突でできた大きなホクロがみつかるかもしれません!?

美術室 泉
1994年9月10日

京都国立博物館 Twitter

ご来館くださる皆様へ
京都国立博物館からのお願い

↑ ページのトップへ