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仏像(ぶつぞう)は何からつくられているの?
美術室 淺湫 毅(あさぬま たけし)
2017年04月11日
仏像(ぶつぞう)は金色に輝(かがや)いているものも多いので、金属(きんぞく)からつくられていると思う人が多いかもしれません。たしかに銅(どう)の表面に金メッキを施(ほどこ)したものも、古代を中心につくられました。しかし、国のおおよそ3分の2の面積を森がしめている日本では、木からつくられたものが圧倒的(あっとうてき)多数です。一方、日本以外の国々、たとえばお釈迦(しゃか)様のふるさとインドをはじめ、中国や朝鮮(ちょうせん)半島では石の仏像(ぶつぞう)がたくさんつくられましたが、日本ではあまり流行しなかったようです。このほか奈良(なら)時代には、中国・唐(とう)時代の影響(えいきょう)を受けて、漆(うるし)や土を素材(そざい)とした仏像(ぶつぞう)も流行しました。えっ、土から仏像(ぶつぞう)をつくるの!と驚(おどろ)いた人がいるかもしれませんが、国宝(こくほう)の仏像(ぶつぞう)にも土でつくられたものがあります。
では今日は、仏像(ぶつぞう)にはどんな素材(そざい)がもちいられているのかをみてみましょう。
【石】
図1はガンダーラでつくられた仏像(ぶつぞう)の頭部です。とてもかたい石からできているので、つくられた時の形がしっかりと残っています。このように、仏像(ぶつぞう)が誕生(たんじょう)したパキスタンのガンダーラ地方やインドのマトゥラー地方、さらには中国や朝鮮(ちょうせん)半島では、石の仏像(ぶつぞう)が数多くつくられました。ところが日本では石でつくられた仏像(ぶつぞう)が流行する時期は、とても限(かぎ)られています。源平(げんぺい)の合戦で被害(ひがい)を受けた奈良(なら)の寺を復興(ふっこう)するため、中国から多くの技術(ぎじゅつ)者がまねかれた鎌倉(かまくら)時代はそのひとつです。東大寺南大門(とうだいじなんだいもん)の有名な仁王像(におうぞう)の裏側(うらがわ)には、大きな石の獅子像(ししぞう)がありますので、ぜひ振(ふ)り返ってみてください。
【銅(どう)】
仏教(ぶっきょう)が伝来した6世紀から8世紀ころにかけては、銅製(どうせい)の仏像(ぶつぞう)が流行します。とくにお寺の中心となるご本尊(ほんぞん)さまは、銅(どう)でつくるのが基本(きほん)でした。また、個人(こじん)むけの小さな仏像(ぶつぞう)も銅(どう)でつくられました。銅(どう)といっても錫(すず)や鉛(なまり)が混(ま)ぜられていて、その表面に金をうすくメッキして光り輝(かがや)かせています。金色は仏(ほとけ)さまのからだが光り輝(かがや)いていることをあらわしています。今でも金はたいへん貴重(きちょう)ですが、昔の人もわずかな金を大切に使うために、メッキという技法(ぎほう)が用いられたのです。
【漆(うるし)】
中国では漆(うるし)や土で仏像(ぶつぞう)をつくることも行なわれました。日本では奈良(なら)時代にその技法(ぎほう)が流行します。漆(うるし)の場合、基本的(きほんてき)には木の骨組(ほねぐ)みの上に土で形づくった土台や、木でおおよその姿(すがた)をつくった土台の上に、おがくずなどと漆(うるし)を混(ま)ぜた木屎漆(こくそうるし)というペースト状(じょう)の素材(そざい)(ピーナッツバターを想像(そうぞう)してください)と、漆(うるし)にひたした布(ぬの)を張(は)り重ねてかたちづくります。手間はかかりますが柔(やわ)らかなすがたの仏像(ぶつぞう)をつくるのに向いています。
【木】
木材は、日本でいちばん多く仏像(ぶつぞう)の素材(そざい)として用いられてきました。飛鳥(あすか)時代にはクスノキ製(せい)のものが多く、次第にカヤやヒノキにかわっていきました。東日本を中心にケヤキ製(せい)のものもみられます。古くは「一木造(いちぼくづくり)」といって、像(ぞう)の主要部分をひとつの木材から彫(ほ)り出していましたが、平安(へいあん)時代の後半には、複数(ふくすう)の木材から作り出す「寄木造(よせぎづくり)」などの技法(ぎほう)が考え出されました。この技法(ぎほう)を完成させたのが、宇治(うじ)・平等院(びょうどういん)の本尊阿弥陀如来坐像(ほんぞんあみだにょらいざぞう)をつくった定朝(じょうちょう)という仏師(ぶっし)です。図2は、定朝(じょうちょう)が生み出したスタイルによってつくられた阿弥陀如来像(あみだにょらいぞう)です。丸みを帯びたおだやかなすがたが特徴(とくちょう)です。このようなスタイルは、藤原氏(ふじわらし)はじめとする当時の貴族(きぞく)たちの好みによくあい、100年以上にわたって流行したのです。
以上、仏像(ぶつぞう)にもちいられている素材(そざい)についてみてきました。今みている仏像(ぶつぞう)が何からつくられているのか、どうやってつくったのか、いろいろと考えながら仏像(ぶつぞう)をみると、つくった人の気持ちがみえてくるかもしれません。