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仏像(ぶつぞう)にはどんな種類があるの?
美術室 淺湫 毅(あさぬま たけし)
2018年04月07日
お正月やお盆(ぼん)にお寺へお参りをしたり、今日みたいに博物館で展示(てんじ)をみたりしていると、阿弥陀如来(あみだにょらい)、観音菩薩(かんのんぼさつ)、不動明王(ふどうみょうおう)、毘沙門天(びしゃもんてん)など、むつかしい漢字の名前をしたたくさんの仏(ほとけ)さまに出会うことでしょう。あまりにもいろんな仏(ほとけ)さまがいるので、仏(ほとけ)さまの像(ぞう)=仏像(ぶつぞう)には、いったいどれだけたくさんの種類があるのだろう、と思ったみなさんも多いのではないでしょうか。いろんな種類の仏(ほとけ)さまですが、じつは
① 如来(にょらい)
② 菩薩(ぼさつ)
③ 天(てん)
④ 明王(みょうおう)
の4種類に大きく分けることができます。ただし偉(えら)いお坊(ぼう)さんの肖像彫刻(しょうぞうちょうこく)のように、必ずしもこの4種類に入らないものもあります(⑤その他)。
① 如来(にょらい)
さとりを得た人、真理(しんり)に到達(とうたつ)した人という意味です。さとりを得ているので、からだを飾(かざ)りたいといった欲望(よくぼう)がなく、基本的(きほんてき)には粗末(そまつ)な衣を身にまとっています。これには、釈迦如来(しゃかにょらい)、薬師如来(やくしにょらい)、阿弥陀如来(あみだにょらい)などがあります。ただし、太陽を仏(ほとけ)さまにした大日如来(だいにちにょらい)は、如来(にょらい)のなかでも別格(べっかく)であるため、菩薩(ぼさつ)と同じようににぎやかなかざりを体にまとっています。仏教(ぶっきょう)はインドにおいて、お釈迦(しゃか)さまとしてよくしられる釈迦如来(しゃかにょらい)によってはじめられました。釈迦(しゃか)は今から2500年ほど前に活躍(かつやく)した実在(じつざい)の人でインドの王子でしたが、さとりを得てからはめざめた人=ブッダ(仏陀(ぶっだ))ともよばれました。図1は仏像(ぶつぞう)が初めてつくられた、パキスタンのガンダーラ地方でつくられたブッダの像(ぞう)です。
② 菩薩(ぼさつ)
悟(さと)りを得るために修行中(しゅぎょうちゅう)で、まだ完全に悟(さと)りを得ていないので、耳飾(みみかざ)りや胸飾(むねかざ)りなどの装身具(そうしんぐ)をたくさん身につけています。弥勒(みろく)はお釈迦(しゃか)さまのあとつぎとして56億7千万年後にあらわれることになっていますが、それまでは菩薩(ぼさつ)として修行(しゅぎょう)しています。その姿(すがた)をあらわしているのが、頬(ほほ)に手をあててものを思う姿(すがた)の像(ぞう)です。また、観音(かんのん)や地蔵(じぞう)などは、さとりを得るための修行(しゅぎょう)をしながらも、我々(われわれ)を救う役目をもっています。そのような役目からか、片方(かたほう)の足をふみ出して歩く姿(すがた)にあらわされることも多いです。
③ 天(てん)
天とは、簡単(かんたん)にいうと神さまのことです。日本にもたくさんの神様がおられるように、インドでも仏教(ぶっきょう)が生まれるよりずっとむかしから、独自(どくじ)の神さまが信じられていました。それが仏教(ぶっきょう)に取り入れられて、守り神となったものです。また、シルクロードを経(へ)て、中国、そして日本へと仏教(ぶっきょう)が伝えられたときに、それぞれの場所であらたに現地(げんち)の神々も守護神(しゅごしん)として取り入れられました。梵天(ぼんてん)や帝釈天(たいしゃくてん)はそれぞれブラフマー、インドラというインドの神さまでした。お正月などにおまつりする七福神(しちふくじん)に含(ふく)まれている毘沙門(びしゃもん)さま、大黒(だいこく)さま、弁天(べんてん)さまも、もともとはインドの神さまです。
④ 明王(みょうおう)
インドでむかしから信じられていたヒンドゥー教が、のちに仏教(ぶっきょう)に取り入れられて発達したのが密教(みっきょう)です。明王(みょうおう)というのは密教(みっきょう)特有の尊像(そんぞう)です。ヒンドゥー教の神々の姿(すがた)が取り入れられたので、多くの顔や腕(うで)を持っています。また、やさしい心だけでは救えない人々のために、不動明王(ふどうみょうおう)をはじめ、その多くが怒(おこ)った表情(ひょうじょう)をしています。図2は愛染明王(あいぜんみょうおう)という仏(ほとけ)さまで、愛の力をさとりにかえるという力を持っています。現在(げんざい)のわれわれも、なぜか愛というと赤い色を想像(そうぞう)しますが、この愛染明王(あいぜんみょうおう)ももとは全身赤い姿(すがた)をしていました。6本の腕(うで)を持ち、そのうちの2本に弓と矢を持っています。東洋のキューピットともいわれますが、キューピッドにくらべると、こちらは表情(ひょうじょう)がおそろしげです。
⑤ その他
上の4つ以外に、聖徳太子(しょうとくたいし)や弘法大師空海(こうぼうだいしくうかい)などの肖像彫刻(しょうぞうちょうこく)などもあります。ただし、肖像彫刻(しょうぞうちょうこく)も単に過去(かこ)の偉大(いだい)な人の姿(すがた)をあらわしているというだけではなく、守護神(しゅごしん)としての役目(やくめ)を担(にな)っている場合もあります。
無数にあるようにおもわれる仏像(ぶつぞう)も、このように分類してみるとわかりやすいですね。また、手の形や表情(ひょうじょう)などにもすべて意味がありますので、そのようなところにも注目してみてみましょう。
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