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中世絵画
国宝
慧可断臂図えかだんぴず
基本情報
- 1幅
- 紙本墨画淡彩
- 縦199.9cm 横113.6cm
- 室町時代 明応5年(1496)
- 愛知・齊年寺
主題の慧可断臂は禅宗の初祖、達磨にまつわる著名な故事。達磨が中国・嵩山(すうざん)の少林寺で岩に向かい、9年もの座禅修養をしていた時、神光(じんこう)という僧が弟子入りを請うてきた。しかし神光は中々許されず、冬のある日に自らの左肘(ひじ)を切り落とし、それを達磨に捧げて覚悟のほどを示した。神光はようやく達磨に受け入れられ、後に慧可と名乗り禅宗の二祖となる。雪舟は、渡明の際などに出会った中国の禅宗祖師図を参照しながら本作を描いたとみられ、同じく慧可断臂の場面を描く構図の極めて似た明代絵画が中国に現存する。ただし本作はその大きさや情景描写の鮮烈さなどにおいて出色で、雪舟晩年の代表作であり、様々な禅宗祖師図のうちでも最も名高い一幅ともなっている。まずもって、切った生白い肘をそのまま描くのは他に例をみない。また厳格な水平線で表される地面、真横向きに表される達磨と慧可の相似形のシルエット、画面の4分の3を囲む岩皴など、異様に幾何学的なモチーフ配置と描き込みの稠密さ、そして寒々しい色の淡彩が、息づまるほどの濃密な禅機を表現する上で効果的な役割を果たしている。当初の制作の契機は不明だが、尾張常滑の斉年寺には早くから伝わっており、天文元年(1532)に近隣の武将、佐治為貞(さじためさだ)が寺に奉納した。
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