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漆工
重要文化財
秋草蒔絵歌書箪笥あきくさまきえかしょだんす
基本情報
- 1基
- 縦22.0cm 横31.5cm 高38.0cm
- 桃山時代 16世紀
- 京都・高台寺
秀吉の天下統一によって長い乱世が終わると、蒔絵の需要が一気に高まった。新興の武士たちの求めに応じ、明快な図柄を単純な技法で描く、装飾性重視の新様式が生まれた。黒漆の表面に、金粉を蒔くだけの平蒔絵(ひらまきえ)、部分的に色味の変化をつける絵梨地(えなしじ)、漆が乾く前にひっかき線でディテールを描く針描(はりがき)などを用いて華やかな文様を描き、漆黒と黄金の対比を際立たせる。この様式の作品を多く伝える秀吉の菩提寺にちなみ「高台寺蒔絵」の名で呼ばれる。
本品は、5段の棚に引出し各2つを並べ納めた箪笥で、引出しの底板には、中にぴったり収まっていたであろう冊子を押し出すための指孔が開けてある。箪笥の天板には提金具をつけ、全体をすっぽりと覆う深い蓋をともなう。蓋や箪笥の外面、引出しの前面のみならず、普段は見えない引出しの側面にも、伸びやかな秋草を描く。様式名の由来となった高台寺伝来の調度のなかでも繊細な表現を見せる名品である。