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No.59

地名を愉しむ

小松 大秀

 みなさん、こんにちは。お初にお目にかかります。この4月から京都国立博物館のスタッフに加わった小松と申します。今後ともよろしくお願いいたします。わたしは3月まで福岡県の太宰府市にある九州国立博物館というところに勤めていました。3年と4ヶ月を過ごした太宰府から京都へと、慌ただしく引越しをして、ようやく一息ついたところです。

 足かけ35年も博物館業界にいるので、これまでも京都には足繁く通っていたわけですが、住んでみると、やはり一入(ひとしお)の感慨がありますね。わたしは子供のころから京都の地名が大好きで、地図を一生懸命に見て、気に入った地名の読みを調べたりしていたものです。「糺(ただす)の森」とか「帷子(かたびら)の辻」とか「黒谷(くろだに)」とか「西洞院(にしのとういん)」とか、ぞくぞくするじゃありませんか。なんかへんですか。まあ、これは外から来た人間の勝手な思いで、地元の方々にはべつになんということはないのかもしれませんが……。それから、もう何十年も前に京都師団なんかなくなっているのに、師団街道なんていう通称がしっかり残っているのもすごいですね。なんでも新しいものがいいというわけではない、古くても愛着のあるものはきちんと残そう、という強い気持ちがひしひしと伝わってきます。

 京都の場合、地名表記が複雑怪奇なので、部外者にとっては、訪問先の家を探したり、郵便番号を検索したりといったことがとてもたいへんなわけですが、こういった歴史的な背景のある地名は、へんに整理したりせずに、ぜひこのまま残してもらいたいと思います。

 わたしはいま、十条から猪熊通を北に上がったあたりに住んでいるんですが、休日にこのあたりを散歩するとじつに楽しいんですね。わたしの足だったら、東寺まで7〜8分でしょうか。4月の初めにはまだ桜が咲いていて、思いがけず京都で最初のお花見を楽しむことができました。それから、この前は十条通をずっと歩いて吉祥院天満宮に行って来ました。

 吉祥院天満宮は、みなさんご存じのとおり、菅原道真公生誕の地と伝えられる場所にあるお宮です。伝承によれば、9世紀の中ごろに道真の父である是善が自邸の中に氏寺として建立したのが始まりらしいんですね。境内には、道真公が朝廷に出仕する前に顔を映したという「鑑(かがみ)の井」や、へその緒を納めたという「胞衣塚(えなづか)」などがあります。ちょっと歩けば由緒ある神社仏閣にお参りすることができるなんて、やはり京都ならではでしょう。

 ちなみに、この吉祥院天満宮の南には、蒔絵町なんていう日本の漆芸を勉強しているわたしには見逃せない地名もあります。これからもゆっくり京都の街を歩き回って、趣味の地名探検を愉しみたいと思っています。

[No.159 京都国立博物館だより7・8・9月号(2008年7月1日発行)より]

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