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中国絵画
重要文化財
遠浦帰帆図えんぽきはんず
基本情報
- 1幅
- 紙本墨画
- 縦32.3cm 横103.6cm
- 中国 南宋時代 13世紀
- 京都国立博物館(A甲812)
中国湖南省の、瀟(しょう)水と湘(しょう)水が合流して洞庭湖に注ぐ一帯は、古くから景勝の地として知られる。この瀟湘の風光から、平沙落雁・遠浦帰帆・山市晴嵐・江天暮雪・洞庭秋月・瀟湘夜雨・煙寺晩鐘・漁村夕照の八景が選ばれ、ひとまとまりに描かれるようになったのは、北宋時代、11世紀の中頃、文人画家、宋迪(そうてき)に始まるとされる。以来、多くの画家が瀟湘八景の画題を手がけているが、本図は、水墨画を得意にした、南宋時代、13世紀の禅僧、牧谿(もっけい)が描いたという図巻を、景ごとに切断し、軸装に改められたものの1幅である。切断に関わったとみなされる足利三代将軍義満(1358~1408)の「道有」鑑蔵印が図の末尾に押され、のちには織田信長の所蔵を経た大名物として喧伝されてきた。
一見、簡素な構成・筆墨ではあるが、淡墨を塗り重ねて下地を作り、その諧調の変化によって、煙霧に包まれた瀟湘地方の湿潤な大気の動きと、光の移ろいが見事に写し出されている。掩靄惨淡(えんあいさんたん、もやがかって薄暗い)の状のみならず平遠の景を活用している点でも、創始者、宋迪の趣旨を具現した傑作である。